要するに、ウォルズが、中国という国の大きさと懐の深さ(「大国さ」)自体に魅せられていたとすれば、その底流は深い。もちろん、現象面では、不可避的に続く中国における人権状況の悪化は、彼の対中観を好転させはしないだろうが、対中関係における重要な局面で、彼の心の奥に存在するであろう中国への「憧れ」のようなものがどのように作用するかは、注意すべきだということである。
ハリスの外交にどう影響するか
長年形作られてきた彼の対中感を一朝一夕に変えることは出来ないだろうから、全てのことを当然視せず(ウォルズは反中だから大丈夫だといった思い込みは厳禁)、中国について指摘すべきことは繰り返し指摘していくことが大切だろうし、同時に、個人的な「対中観」を持たないであろうハリスへの働きかけが一層重要になろう。
なお、もう一つ、東南アジア諸国との関係について触れておくと、ハリスは副大統領として、これまで3回東南アジアを歴訪している。これは、地域別の外遊先としては、一番多い。
21年には、シンガポールとベトナムを公式訪問した。ベトナム訪問は米副大統領としては初めてであった。22年には、バイデン大統領に代わりタイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席し、その後フィリピンも歴訪し、南シナ海の要衝パラワン島も訪れた。昨年23年には、東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会合にバイデン大統領に代わり出席するためインドネシアを訪問した。
このようなハリスが大統領になることをASEAN諸国はおそらく歓迎しているのだろう。