三つの可能性がある。一つ目は、イランの核活動、特に核爆発装置の製造に向けた研究開発が加速し、ないし新たな段階に達したという実体面の変化が生じた。二つ目は、従来の情報評価の「実験可能な核装置を製造するのに必要となる、核兵器開発の主要な活動には現在のところ従事していない」というラインに元々無理があり、現実に適合するように変更する必要があった。三つ目は、中東情勢の現状に鑑み、イランに対してより厳しいラインを打ち出す必要があった。この三つである。
情報評価の本来のあり方からすれば、一番目の要因(実体面の変化)によるものであるべきであるが、二番目の要因(従来のラインに元々無理があった)、三番目の要因(中東情勢)が影響している可能性も否定できない。
イランとの緊張関係は高まる
中東情勢との関連について言えば、この情報評価がなされたのは、イラン領内でのハマス指導者の暗殺よりも前の時点であるが、昨年10月のイスラエル・ハマス紛争の勃発以来、イランをめぐる緊張は高まっていた。米国は大統領選挙も控え、選挙の季節に突入している。米国の政治情勢を考えれば、15年のイラン核合意の再構築は考えられず、むしろイランに対してより厳しいラインが求められる地合いとなっている。
今回の情報評価のラインの変更の原因・背景を特定できる材料は乏しいが、イランが引き続き核の「寸止め」戦略の下で核活動を進める中、イランをめぐる緊張度の温度が高まりつつあると捉えておくのが良いように思われる。