2024年11月21日(木)

家庭医の日常

2024年9月27日

 がんの治療はA科のB医師、身体的症状はC科のD医師、そして精神的症状はE科のF医師、などと患者を問題ごとに分断するのではなく、がんや生命を脅かす疾患にかかる以前からその患者と家族のことを知っている家庭医とそのチーム(プライマリ・ヘルス・ケアチーム)が継続して関わることのメリットは大きい。もちろん、必要に応じてそれぞれのがんケアの専門家と相談し連携することも家庭医の機能に含まれる。

 緩和ケアが行われるのは、ホスピスや病院の緩和ケア病棟などの入院・入所が前提の医療施設に限定されるものではない。診療所などの外来診療でも提供可能だし、在宅ケアや介護施設でのケアもある。それが必要な時に、必要なケアチームと分担または共同して、必要なだけ、適切な場所で行う。

 いろいろな点でシームレスに関わることができるのが家庭医のアドバンデージである。利用する患者・家族から見れば「便利」ということだ。

 かつて「ホスピスは建物ではない、哲学である」と言った人がいた。「哲学」とまで大上段に構えなくても、家庭医は患者・家族の意向と必要性に応じて柔軟に、実際的な対応ができるように心がけている。

家庭医は緩和ケアにどのぐらい関わっているか

 私のかつての同僚で大学院博士課程を修了間近の家族支援専門看護師が、家庭医が行う緩和ケアについて研究し、その論文が最近出版された。

 それによると、日本プライマリ・ケア連合学会が認定した家庭医療専門医307人の中で、305人(99.3%)が緩和ケアを必要とする患者を診療し、285人(92.8%)の家庭医療専門医が緩和ケアに関するトレーニング経験があった。そして、対象となる患者が抱える疾患は、がん92%、認知症・フレイル74%、肺疾患45%、心臓病40%、脳血管疾患33%、神経難病30%、腎臓病23%、肝臓病16%、筋骨格系8%、膠原病7%などと幅広かった。

 このように、日本でも家庭医療専門医の多くが、緩和ケアに関するトレーニングを経て、幅広い疾患をもつ患者に対して緩和ケアを実施していることが伺えたが、今回のこの研究は、参加してくれた家庭医療専門医の自己評価による緩和ケア実施の現状についてのいわばスナップショットである。

 その緩和ケアが患者・家族にとって実際どう役に立ったのか。そうしたケアの質について評価する研究も今後必要で、そのフィードバックによってさらに専門研修での緩和ケアのトレーニングが改善されていくことが望まれる。

「かかりつけ医機能」報告制度

 24年7月31日、厚生労働省は「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」が取りまとめた報告書『かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理』を公表した。

 これは、地域の診療所・病院がある程度のプライマリ・ヘルス・ケアを担えるようになるために、自らの医療施設としての「かかりつけ医機能」の有無について報告を求める制度作りである。

 今回決まった主な報告事項は、 かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無、総合診療専門医の有無、そして17の診療領域(下記)ごとの一次診療の対応可能の有無となっているが、肝心のかかりつけ医機能に関する研修内容についても、一次診療で対応できる頻度の高い40程度の疾患についても、明記を避けて「改めて検討する」と先送りされた。

<17の診療領域> 皮膚・形成外科領域、神経・脳血管領域、精神科・神経科領域、眼領域、耳鼻咽喉領域、呼吸器領域、消化器系領域、肝・胆道・膵臓領域、循環器系領域、腎・泌尿器系領域、産科領域、婦人科領域、乳腺領域、内分泌・代謝・栄養領域、血液・免疫系領域、筋・骨格系及び外傷領域、小児領域

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