したがってオバマ政権は、いわゆる「靖国問題」の一件で日本との同盟関係に亀裂を生じさせるような愚行に及ぶようなことはしないだろう。逆に、日米関係を動揺させるような誤解が広がる事態となれば、むしろ米国政府が急いでそれを解消し、日本との同盟関係を正常の軌道に乗せていかなければならない。前述のハーフ副報道官の発言は、まさにオバマ政権のこうした努力の一環であると理解すべきであろう。
しかし一方の中国はまるきり、オバマ政権の本音を読み間違ったようである。米国政府の「失望声明」をチャンスだと思い込み、それに乗じて日米同盟の離間に重点をおいた「日本包囲作戦」を展開することになったわけだが、誤った状況判断と思い込みの上で策定した代物であるが故に、最初から成功する見込みはないのである。
トーンダウンした韓国
実際、前述のハーフ副報道官の記者会見以降、中国の作戦は見る見るうちに頓挫していくこととなった。
挫折はまず、12月31日に行われた中韓外相の電話会談から始まる。
中国の発表では、王毅外相が会談で「中韓は安倍首相の行為を厳しく非難した。われわれの反応は正当だ」と発言し、尹炳世外相が「参拝に反対する韓国政府の厳しい立場」を表明したとの内容だったが、これに対し、韓国の発表文は「最近の北東アジア情勢など関心事を協議した」と述べるにとどまり、関連部分の具体的内容を明らかにしなかった。
韓国の聯合ニュースはこの会談に関して「日本との歴史問題をめぐり、王外相が韓国側に連携を呼び掛けたとの見方があるが、韓国政府は『国ごとに対応する問題』との立場だ」、と解説した。その上で「韓国政府は日本と協力する分野もあり、韓米日の協力の必要性もある」とし、「歴史問題で中国と全面的に連携するのは望ましくないというのが政府内外の雰囲気だ」とも伝えた。
このように、中国の「日本包囲作戦」はその出足からすでに躓いたわけである。そして年明けの1月7日、米国で行われた米韓外相会談の結果によって、中国はよりいっそうの挫折感を味わうことになった。
この会談の内容に関して、韓国の尹炳世外相は会談後、「歴史問題が地域の和解と協力を進める上での障害になっている」と語り、安倍首相の靖国神社参拝で冷え込む日韓関係を取り上げたことを明らかにしたが、一方、ケリー米国務長官は会見で日韓関係についていっさい触れなかったし、安倍首相の靖国参拝に対する批判は一切行わなかった。つまり米国政府は、前述のハーフ副報道官の発言を持っていわゆる「靖国問題」に終止符を打ちたいという考えであり、それを韓国側にもしっかりと伝えたわけである。