2024年10月18日(金)

WEDGE REPORT

2024年10月18日

 実際のところ、今年2月には北朝鮮製の短距離弾道ミサイル「KN-23」とみられる残骸が鹵獲(ろかく)されているので、現地協力者が話すように、北朝鮮のミサイル技術者がウクライナ戦争に派遣された可能性は大きいとみてよいだろう。

船舶とシベリア鉄道を使ってウクライナへ

 当たり前の話だが、ミサイルのような高性能兵器はボタンを押せば飛んでいくという単純なものではない。KN-23は移動可能な輸送起立発射機(TEL)に搭載されているが、指揮統制や目標の取得・指示・誘導に必要な諸元の計算と入力は、専門教育を受けた人材に頼らざるを得ない。

 派遣された技術者は、このような部分をロシア兵に指導する、あるいは自ら操作しながら、命中精度や信頼性を向上させるためのデータを収集しているのだろう。

 では、これらミサイルはどのような経路でウクライナまで運ばれているのだろうか。現地協力者は続ける。

 「ロシア軍に向けた武器の輸送は、主に船舶で行われています。共和国(北朝鮮)の鉄道輸送網は貧弱なので、各地から集めた武器や弾薬を元山港や清津港に集めて船積みし、羅津港で荷揚げした後、そこから20キロほど離れた雄尚港まで鉄道で運び、ロシア船に積み替えます。このような経路はミサイルも同じだといいます。

 本来、羅津港とロシアのハサン駅は鉄道で結ばれているので、シベリア鉄道を経由してウクライナまで運び込むことができるのですが、ロシアは雄尚港から内陸のコムソモリスク・ナ・アムーレまで船で輸送し、そこから鉄道に積み替えるそうです。

 親族は『おそらく、ロシア軍の一大拠点であるコムソモリスク・ナ・アムーレで検品や作動確認を行ってから前線に輸送しているのではないか』と話していました。

 また、ミサイル技術者の一部は、ミサイルのお供をして鉄道と船を乗り継いでいくらしいですが、ほとんどの者は平壌からウラジオストックまで高麗航空機で渡り、その先はロシアの軍用機で移動するそうです」

 このような鉄道や船舶を利用した輸送は、偵察衛星や通信傍受で確認できるはずだが、日本を含め各国の情報機関は成果を公表していない。一方で、北朝鮮ニュース専門サイト「デイリーNK」は今年3月、平壌からウラジオストックに飛行した高麗航空機に国防科学院とミサイル総局の技術者が搭乗していたと報じている。


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