北朝鮮軍人の発言から、彼らがウクライナの最前線で戦闘工兵の任務に就くことがわかる。戦闘工兵は歩兵よりも前方に進んで鉄条網やバリケードなどを取り除く、いわば標的のような任務をこなさなければならない。不安で仕方ないのは当たり前だろう。
遺骨すら家族に戻されない秘密任務
現地協力者は、「自分の目で見たのはこの部隊だけだが、他にも多くの部隊がロシアとの国境を渡っていったと聞く。戦車や大砲は誰も見てないので、歩兵か工兵だろう」と話しながら、当時の記憶が蘇ったのか、涙ながらに話を進めた。
「酒宴が終わりに近づくと、若い将校が近づいてきて『焼酎は余っていませんか』と聞いてきました。あれほど飲んだのにまだ飲み足りないのかと呆れると、『兵士たちに飲ませてあげたい』と言うのです。
彼の話では、ウクライナへの派遣は秘密裏に行われるため、戦死すると家族には病死と伝えられ、遺体や遺骨も戻されないそうです。私は可哀想になって、あるだけの焼酎を持たせました」
これまでに紹介した現地協力者の話から、北朝鮮はウクライナ戦争にKN-23など弾道ミサイルの技術者を継続して派遣する一方で、8月末に少なくとも数百人規模の工兵部隊をウクライナ戦争に派遣する目的でロシアに送ったことが明らかになった。
これまで北朝鮮は少数の軍事顧問団を海外に派遣したことはあったが、いわゆる正規軍の派遣は初めてのこと。これまで合同訓練を行ったことがないロシア軍と朝鮮人民軍が、すぐさま最前線で協同することは難しいと思われるが、日本を含む国際社会は監視の目を緩めてはならない。