2024年10月28日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月28日

 欧米において見られるように、移民人口の増大によって反移民のポピュリスト的反動に繋がっていることを考えれば、中国は、人口減少から脱出するために移民を増やすという道を歩むことを嫌がるかもしれない。中国の支配者は、統制を維持することを、経済成長を含む他のあらゆることよりも優先してきた。

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外国人受け入れが進まない2つの背景

 まず、中国との比較のため、日本と韓国の合計特殊出生率を見ておくと、日本:1.20(2023年)、韓国:0.72(2023年)である。一方、国内人口に占める外国人の比率は、日本:2.7%(2024年)、韓国:3.7%(2023年)である。日韓両国を対比してみると、出生率が低い韓国の方で外国人の比率が高くなっている。

 事実、韓国は出生率が世界でも最低水準となり、「国家の消滅」の危機が叫ばれ、「非専門就業」、「雇用許可制」の緩和、「地域特化型ビザ」など各種の手段で外国人労働者の雇用に力を入れている。日本も、技能実習制度を育成就労制度に切り替えるなど、外国人労働者の積極的活用の方向に舵を切っているが、危機感の度合いも、外国人受け入れへの熱意も韓国の方がはるかに高い。

 それでは、中国の立ち位置はどこになるのか。出生率で言えば、中国は1.08(2022年)と日本と韓国の間に位置するが、国内人口に占める外国人の割合は0.6%と、世界的に低水準である韓国、日本に比しても更に低くなっている。

 中国は「移民送りだし大国」であると共に、「移民受け入れ小国」である。その背景として、この論説では、外国人に対する忌避感情、支配体制にとってのリスクとの捉え方に言及しているが、それらに加え、いくつかの要因を念頭に置くべきであろう。

 第一に、中国では人種・民族に関わる問題はデリケートな問題である。中国は多民族国家であり、民族は56を数えるが、漢族が全国総人口の約92%を占める。チベットや新疆に見られるように「多民族の共存」という建前と「漢民族による支配」という現実が交錯する。外国人を大量に受け入れることは、ただでさえデリケートな人種・民族に関わる問題をさらに複雑化させるリスクがある。

 第二に、現在の中国の経済状況は控えめに言っても逆風下にある。中国の若年層の失業率は、公式の数字では17.1%(2024年7月)とされるが、実態はそれよりもはるかに深刻と指摘される。


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