現在、日本で外国人労働者を増大させる力学が働いているのは「働き手不足1100万人」とも言われる現実が後押ししている面がある。中国では、国内で景気が低迷し、失業が問題化する中、外国人の雇用を拡大することは容易でなかろう。地域、業種、対象国を限定した形での外国人労働者の受け入れはあり得ても、大規模な受け入れは考えがたい。
「日本型」「英国型」「イスラエル型」の対策
どの国においても、経済・社会が高度化すれば、女性も高等教育を受け、社会進出し、価値観は多様化し、出生率は下がる傾向にある。それを放置すれば、経済規模は縮小していく。その対応策として、外国人を受け入れれば、民族の連続性や社会の安定の面で課題が生じる。
人口学者のポール・モーランドは三つのモデルを示している。一つは「日本型」であり、少子化の中、外国人の受け入れを制限し、経済力を犠牲にするタイプ。二番目は「英国型」であり、少子化の中、外国人を多く受け入れることで、経済力は確保するが、民族の連続性を犠牲にするタイプ。三番目は、「イスラエル型」であり、子どもの出産を奨励する文化によって経済力も民族の連続性をも確保するタイプである。
日本と韓国が苦闘しているのは、外国人労働力の導入によって、どれだけ経済規模の縮減の程度を食い止められるか、それを社会の安定とバランスさせることができるかの葛藤である。モーランドの三つのモデルに即して言えば、「日本型」モデルから、どの程度「英国型」に近づけられるかの試みと言って良い。
「イスラエル型」に近づけるための努力も行ってきた。地域によっては、そうした努力が功を奏している事例もあるが、国全体としては顕著な効果は見られない。
日本や韓国とは異なり、中国については、この論説が指摘するように「英国型」に近づこうとするとは考え難い。そうだとすると、経済規模の縮減を回避することは困難となろう。日本も、世界も、急速に少子高齢化が進み、人口減少し、経済規模が低減していく中国とどう共存していくかの課題と直面することになる。