解体 ロシア外交

2014年1月31日

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 そして、1月後半から各所にテロの脅迫状が届くようになった。「五輪に参加すればテロ攻撃を加える」という旨の脅迫状が、国際オリンピック委員会(IOC)に加え、ハンガリー、イタリア、ドイツ、スロベニア、チェコ、日本などのオリンピック委員会に届いたのだ。それらの脅迫状はロシア語のみであったり、ロシア語と英語の両方で書かれたケースもあるという。

米国も対テロ支援へ

 前述のように、米国はオバマ大統領がロシアの同性愛問題や人権問題に反発し、ソチ五輪への欠席を決定した一方、テロ対策では協力する姿勢を見せている。米国防総省の報道担当者は1月20日に、ソチ五輪でテロなど不測の事態が起きた場合、米国はその対応を全面的に支援する用意があるとロシアに伝えていることを発表したのである。

 テロが起きた際に、選手などを避難させるために黒海に展開している艦隊2隻が使用可能とし、C17輸送機を数機ドイツに待機させ、約2時間で現地展開できる態勢を整える他、米国務省が契約する他の航空機の活用も検討するという。だが、米国が連邦捜査局(FBI)の専門家を含む最多で100人の治安要員派遣を打診した件については、ロシア側が拒否し、数十人規模となったという。ロシアは五輪に乗じて、ロシアで米国による諜報活動が行なわれることを危惧していると思われる。

 また、NATOとロシア軍は1月23日にソチの安全のため、ロシア軍と情報交換をしつつ、連携を維持していくことで合意した。

チケット販売も伸び悩み

 当局の努力にもかかわらず、ソチ五輪のチケット販売の状況は思わしくないようで、1月17日現在で約7割にとどまっている。チケットはロシア国内に7割、国外に3割が割り当てられており、国外については日本やドイツで売り切れ、多くの国でほぼ売り切れたとされているが、完売に近かった最近の五輪と比べると、テロへの懸念や観戦者パスポートなどのテロ対策が心理的障壁を高めていることなど影響しているのではないかと考えられている。

 ロシア国内では、モスクワと開催地・ソチでチケットの売り上げが最高率となっているとはいえ、ソチ住民でも五輪には行かないという人が少なくない。五輪に関わるソチの開発に伴う環境破壊や停電、ソチの閉鎖など住民の不利益に対する反発がかなり大きいだけでなく、テロが起きそうな場所に近づきたくないという声も多いのだ。

 他方、IOCの委員が、スキー競技などが行われる山岳会場について、主催国ロシアが安全対策のために観客数を半数に制限すると決定したと述べたと報じられたが、収容人員を制限するのか、チケット購入者数を制限するのかなどの詳細が明らかにされていない上に、ソチ五輪組織委員会がその報道を否定するなど、不明なことが多い。そうなると、チケットの販売率も明確な数字とはいえなさそうだ。

 このように、当局が莫大な費用と労力を費やしてソチ五輪の成功に向けて躍起になっているとはいえ、テロへの不安感は拭えず、また住民などの反発も大きいなか、ソチ五輪の成功はプーチン大統領とロシア政権の威信に大きく影響してくるだろう。何としても、五輪とパラリンピックを平和裏に終わらせる、それがプーチン大統領の目下最大の課題である。


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