2024年11月21日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2024年10月31日

 先述の山口氏によれば、既婚女性では、330万人が就業調整している。これは、非正規雇用者の約半数で、「103万円の壁」や「130万円の壁」を意識していることになる。

 また、60歳以上では、112万人(うち、60~64歳は50万人)が就業調整をしている。特に60~64歳は、在職老齢年金制度により、一定の金額を超えると年金額が減額されることが就業を阻害しているという。

この際、すべての壁を取り払って欲しい

 国民民主党には、税収の103万円の壁だけでなく、社会保険料の106万円の壁、130万円の壁も改革して欲しい。保険に入らなければならない限度額を178万円に引き上げれば良いだけだ。

 壁に直面した人は働かなくなってしまうのだから、保険料を多く取れる訳ではない。厚生労働者は、不合理な制度を作って、すべての人が保険に入るべきだという美学のスローガンを叫んでいるだけだ。

 178万円まで働いてもらえば、保険料は取れないが、税金は取れる。厚労省の美学主義者は心理的に損をするのかもしれないが、財務省は得をする(原田泰『日本人の賃金を上げる唯一の方法』80-83頁、PHP新書、2024年、参照)。

 さらに、最低賃金の引き上げによって年収の壁に直面して人手不足を引き起こすという大問題も解決できる。

 自民・公明で215議席なので過半数の233議席まで18議席足りない。無所属議員の追加公認もあるだろうが、無所属は12人しかいないので過半数にできない。28議席の国民はキャスティングボートを握っている。

 この際、103万円の壁だけではなく、すべての壁を取り払って欲しい。103万円の壁で若者の心をつかんだが、さらに、働きたい専業主婦、高齢者の心をつかめば、立憲に代わる野党第一党の座が見えてくる。

 正社員の女性に得はないが、損をする訳ではない。専業主婦と違って、収入が少ないのに自分で保険料を払わなくてはならないシングルマザーは恩恵がないかもしれないが、国民民主は「ひとり親家庭、特にシングルマザー家庭の養育費確保問題に取り組むとともに、児童扶養手当の水準を引き上げます」と政策各論インデックスに示している。

 これがそれぞれできれば、「手取りを上げる」という公約を果たすことができる。有権者の投票に応える経済政策を進めてもらいたい。

(本稿の執筆では二松学舎大学の中垣陽子教授から貴重なアイデアをいただいたことを感謝する。)

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