2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月13日

 カート・キャンベル前東アジア・太平洋担当国務次官補が、1月9日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説で、最近アジア諸国において国家安全保障会議(NSC)のような機構の設立が進んでいることに注目し、その背景を分析しています。

 すなわち、中国と日本が共に国家安全保障会議のような機構の設立を進めている。その理由は何であろうか。

 日本では、明確に規定された法に基づく国家安全保障会議の設立が遂に実現した。中国でも、先般の3中全会で、中国共産党が常務委員会の中に国家安全保障会議のような機構を設立する方針を決定している。

 日本の首相と中国の国家主席が外交・安保政策についての意思決定を集中することとした背景には、国内的・国際的要因がある。豪州も首相府の中にNSCの小型版を設置し、韓国も青瓦台の中にそのような組織を設けている。

 アジアでは、急速に変化する安全保障環境に対応するために、政策の検討や決定を大統領府ないし首相府に集中しようとする大きな流れがある。

 理由は色々である。24時間のニュースサイクルで動く世界では、敏速な対応が必要であり、そのためには、権限と政策決定を指導者とその最も信頼する側近に集中する必要が高まっていることが先ず挙げられる。タイムリーな対応が優先であり、中央での調整が役立ち得る。

 更に政治的信頼の問題もある。アジアではナショナリズムが高まっており、外交のパフォーマンスが国内の政治的評価に繋がる傾向が強まっている。如何なる国家も海洋の安全や盗聴問題などで大きな失策は許されない。そこで、政府首脳の間では、政策決定を関係省庁から取り上げたいという誘惑が高まってくる。外務省や国防省は、キャリアの人材で構成されており、多くの政治家に不信感を持たれることは不可避である。指導者たちは、複雑な問題については信頼できる側近との間で集中的にオプションを検討したいと考えることになる。これを可能にするのが、国家安全保障会議である。


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