本書は語彙を豊かにするコツが3点あるという。その3つのコツをわたしが簡単にまとめると、(1)一度にたくさん単語を詰め込まない、(2)文章の中で覚える、(3)ネイティブがよく使う単語を優先して覚える――だ。だから、本書は習得すべき単語をあえて100個に絞り、かつ、捨て猫ミクの冒険譚というストーリーのなかにおりまぜて覚える仕組みにした。厳選した英単語を文章の流れの中で覚えようという仕組みだ。
物語は100章に分かれていて、各章は150語以内の短いストーリーになっている。各章は短い英文なので、1章あたり「時間にして10分足らずで読め(る)」と本書では説明している。しかし、わたしが試しにストップウオッチをもって1章を読んでみたが、1分もかからなかった。ネイティブスピーカーによる朗読CDもついているが、各章それぞれ朗読時間は50秒前後だ。
つまりは、それだけ手軽な英文で構成されており、膨大な量に恐れをなして初心者は心がなえてしまう。そんなリスクはかなり低い、気軽に始められる入門書といった感じだ。おまけに、各章にはその章で覚えるべき単語が1つゴシック体で書かれ、その章のなかで最低2回は登場する。文脈の中で単語を覚え、使い方も身につける工夫が施されているというわけだ。
知っている単語ばかりでも……
ところが、である。本書がターゲットとする100の英単語のリスト(本書10ページ)をみて衝撃を受けた。自慢ではない。わたしはひとつひとつ単語をみていったのだが、知らない単語がないのである。ということは、この英会話本を読むのはわたしにとっては全くのムダということなのか?
結論から言うと、単語を知っていることと、使いこなすことは別物であることが分かり、本書を読んで良かったと今は思っている。受験英語で勉強し、通り一遍の意味を知っていても使えない。その英単語をネイティブが実際にどういうニュアンスで使うのかなどを、やさしく解説してくれるのが本書なのだ。
本書ではまず、捨て猫ミクを巡る物語が英文で1ページ載っている。ページをめくった裏のページに、ターゲットとなる単語の詳しい説明が出てくる。例えば、「mad」という単語を取り上げたページでは次のように「使い方アドバイス」が出てくる。