2024年12月27日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2024年12月2日

 しかし漁港を管理する全ての自治体が何か一つ「海業」を取り組むという目標は、現実的なものなのであろうか。下からの自発的な取り組みではなく、単なるお仕着せのものともなれば、国からの補助金を獲得したのは良いがプロジェクトの内容自体はコンサル会社に丸投げになり、その結果金太郎飴のごとくどの海業も販売施設や食堂などの画一的なものになりはしないか。

 漁港はどこも必ずしも交通至便なわけではなく、まして都心から京急が走っているわけでもない。500カ所も似たような取り組みをしてしまえば、観光客の取り合い、パイの奪い合いになってしまうだろう。

 また、もし補助金が付いたとしても、それはあくまで一部なので、漁業者や漁協が残りを負担することともなろう。もしプロジェクトが成功すればよいが、そうでなければ、漁業者自身が負債を背負いかねない。

 現在「海業」振興の旗振り役となっている水産庁でこの問題をリードしているのは漁港漁場整備部である。この10月から同部の計画課を「計画・海業政策課」に改め、海業に関連する事務の総括や漁港施設活用についての事務的業務を担当するほか、「海業調整官」などの役職も設置した。

 業界団体であり歴代漁港漁場部長が会長を務める「全国漁港漁場協会」も全面的にバックアップ。10月末に開催された同協会年次大会では「海業の全国展開」を特に拡充した提言を採択している。

 漁業の6次産業化とも言い換えられる「海業」とは、漁業者と製造業や加工業、観光業との連携、あるいは漁業者自身による関係する上記産業への取り組みと考えるならば、それは単なる漁港の整備と同義であるはずもない。漁港整備を専らとしてきた部局の職員が、6次産業に必ずしも通暁しているわけでもなかろう。

 今年度の水産予算3169億円(前年度補正含む)のうち、額にして1143億円、比率にして約3分の1と最も大きな割合を占めているのが漁港整備などの公共予算である。「海業」に必要だからという理屈の下で、漁港整備予算の維持・拡大が目的化されるべきではない。

まずは漁業者の創意工夫を

 漁業の6次産業化自体は積極的に奨励されるべきであろうし、国からも適宜支援が必要ともなろう。問題は、それが漁業者のイニシアティブと創意に基づくべきものであって、上から降ってくるスキームに無理やり合わせるかたちで実施されるべきものではないということである。

 必ずしも漁港単位にこだわる必要もない。むしろ漁港整備に振り向けられていた予算を大胆に削り、その一部をソフト面に対する支援に充当すべきである。

 これは漁業者自身から上がっている声でもあるが、漁業者に対する支援策は、交付下限額が大きすぎで小規模な漁業単位レベルでは申請が不可能であるものもある。今後さらに必要となるのは小規模な、個々の事業にフィットした支援ではないか。

 同様に重視されるべきは、資源の管理自体に対する予算の大幅な拡充である。前年度補正を含む今年度水産予算のうち、「資源調査・評価の充実」の項目にあるのは107億円と3%に過ぎず、うち49億円は調査船「蒼鷹丸」の代船建造に充当されるもので、これを引くとわずか52億円である。

 漁業が右肩下がりである最大の要因は、それだけでは食べてゆけないからであり、なぜ食べてゆけないかと言うと、魚が獲れないからである。そして魚が獲れない要因となっているのが、人間による乱獲と環境の変化である。いずれにしても、資源に対する調査を十分に行い、それを踏まえたうえで資源管理措置の強化や環境の変化に合わせた適応策の実施が必要となる。

 漁業が6次産業化し魅力あるためには、まずそこに魚があることが前提となる。魚や漁業がなくして、「海業」はあり得ない。「海業」の発展のためにも、資源調査の拡充と適正な資源管理が望まれるところである。

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