2024年4月26日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年2月17日

弾薬を搭載せず、
目標をピンポイントに破壊

 米国の極超音速飛翔体の研究開発は、空軍とDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency:国防高等研究計画局)、さらに軍需産業が関わっている。X-51 Wave RiderやFalcon HTV2がその代表格だ。それぞれ一応の試験飛行を終えている。

2011年、テスト飛行中に通信途絶したHTV2(写真:DARPA/ロイター/アフロ )

 極超音速飛翔体は、米国の構想では、通常兵器として使用される。弾頭に爆薬さえ搭載しない。飛翔体の質量と速度だけで、目標を破壊するのだ。これでも破壊力は凄まじいが、破壊する範囲は極限できる。大量破壊兵器ではないということが、使用のハードルを低くする。

 また、飛行を制御し滑空することから、ただ落下するだけの弾道ミサイルよりも、はるかに命中精度を高くできる。攻撃目標周辺の住民等の巻き添えを最小限にできるということだ。

 さらに、滑空能力を有することで、飛行ルートを選択でき、低高度を飛行できる。こうなると、現存のBMD(Ballistic Missile Defense:弾道ミサイル防衛)システムでは撃墜することが極めて困難である。

 誰にも撃墜できず、1時間以内に世界のどこに存在する目標であっても、必ず破壊する兵器が開発されているのだ。しかも、大量破壊兵器ではなく、配備されれば実際に使用される可能性がある。

 オバマ政権は、極超音速飛翔体を用いて核廃絶を進める意図があるかもしれないが、現実的には、核兵器と通常兵器の間を埋める性格のものになると考えられる。


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