2024年11月25日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年2月17日

 しかし、こうした兵器が各国に与える心理的影響は計り知れない。極超音速飛翔体の抑止力は高く、戦略性の高い兵器であると言える。これまで、米国のほかに、ロシア、インド等が研究開発していることは報じられていた。ここに、中国の試験成功のニュースが飛び込んできたのだ。

 極超音速飛翔体を兵器として実用化した国は、新たな抑止力を手に入れることになる。国際社会の戦略バランスが変わる可能性があるということだ。1月23日、米国防総省での記者ブリーフィングで、ロックリア太平洋軍司令官が「先端技術を用いたシステムが安全保障環境を複雑にしている」と述べたのは、そのような意味だろう。

 米国が試験に成功し、中国がこれに続いた。既存の核保有国は、現在の地位を失わないために、極超音速飛翔体の研究開発を止める訳にはいかないだろう。1月28日には、米国防総省のケンドール国防次官が下院軍事委員会で、「米国軍の技術的優位性は、アジア太平洋地域を中心に、過去数十年で経験したことのない挑戦を受けている」と指摘した。さらに「技術面での優位性は保障されていない。これは将来の問題ではなく、いま現在の問題だ」と述べている。現有の通常兵器では、米中間にまだ大きな技術的な開きがあることから、この発言は、極超音速飛翔体について述べたものと考えられる。

撃墜に有望なのはイージス艦

 一方で米国は、極超音速飛翔体による米国本土への攻撃を、黙って許すつもりはない。極超音速飛翔体を撃墜するため、米軍は海上自衛隊とともに新たな試みを始めていると聞く。

 現在の米軍では、艦艇、航空機及び車両は、ネットワークの中の一つ一つの端末に過ぎないという。米軍が運用する全てのビークルを、衛星等も用いて結ぶことによってネットワークを形成し、情報をリアルタイムで共有するとともに、ネットワーク内の最適な武器を選択し使用する。

 これを、極超音速で滑空する飛翔体を撃墜するために進化させようというのだ。最も有望なのがイージス艦である。日米のイージス艦をつないでネットワークを形成する。いずれかのイージス艦が飛翔体を探知する。低空を極超音速で滑空していれば、イージス艦といえども、探知した時にはすでに攻撃には手遅れである。

 しかし、探知情報はリアルタイムで全てのイージス艦に共有される。次に別のイージス艦が探知すれば、より正確な飛翔体の飛行諸元を得ることができる。この飛行諸元を用いてネットワークが判断し、攻撃に最適なイージス艦を選び、攻撃諸元を与えて自動的に攻撃させる。探知が多ければ多いほど、攻撃精度は増すだろう。


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