他にも、沖縄県宮古島のメガソーラー実証研究設備では、10年稼働の太陽光パネルに多くの変色箇所があった。銘板を見ればシャープ製とある。メーカー各社は競争のなかで「20年保証」「25年保証」などと謳うが、それはあくまで営業戦略であって、技術的に担保されたものではない。過去に設置されたパネルからは、国産、海外を問わず、さまざまな劣化が見つかってきているとの声が業界から上がっている。
(提供・時事)
PID現象という劣化現象がある。欧米のメガソーラーで大幅な出力低下が報告され問題になっている。日本メーカーのパネルで日本的な運用をしていればPIDは起こらないとされてきた。しかし、実は、国内でも数件、すでにPIDが発生しているという事実が今回の取材で明らかになった。
太陽光パネルの技術評価に詳しい日本太陽エネルギー学会副会長の太和田善久・大阪大学特任教授は、こう警告する。「10kW以上ではFIT認定時にJIS等の認証さえ必要ない。劣化は程度問題で必ず起きる。おそらく事業者が想定している以上の劣化も起きるだろう。20年ごろには薬害のような問題になるのではないかと懸念している」。
再エネ推進は政治家や官僚にとってダメージにならないため、高い買取価格を維持する力が働く。その結果、バブルが過熱し、様々な「小銭稼ぎ」が出現し、監視できなくなっている。最も問題なのは、事業者も銀行もメーカーも、世界一高い買取価格という甘い環境に守られ「リスク評価など学習能力が低い」(格付機関関係者)状態が続いていることだ。
この状態で、劣化問題が火を噴けば、一気に国民の信頼を失い、再エネ政策は危機に瀕するだろう。20年保証に耐える性能規格を新設することと、世界標準に買取価格を下げることが必要だ(取材では「28円で十分やれる」という事業者の声もあった)。あたりまえのプレッシャーのなかで、各主体の自律的成長を促すべきであろう。
■WEDGE3月号 第2特集 太陽光バブル拡大 蓄積される「歪み」
◎バブル最前線九州 メガソーラー乱開発で「エコ」と矛盾も(本記事)
◎「空枠取り」「小分け」「土地転がし」次々現れる小銭稼ぎ
◎国産パネル一皮剥けば海外製 銀行もメーカーもガラパゴス
◎甘い想定、産業政策のウソ 買取価格を大胆に切り下げよ
朝野賢司(電力中央研究所主任研究員)×WEDGE編集部