2025年3月14日(金)

WEDGE SPECIAL OPINION

2025年1月22日

閉塞を打ち破るための
非常識な力量

 かくして、いわばむき出しの「ホンネ」が語られるようになる。それが何を意味するかは別として、ともかくも米国が善ければよいという「米国第一主義」、「米国の黄金時代がやってくる」、「不法移民を追い返せ」、「外国製品を入れるな」といった過激な主張が社会を動かすのである。トランプ支持者たちは、既存の枠組み、既存のやり方を破壊する「トランプ革命」を求めているのである。

 言い換えれば、今日のグローバリズムのもとでの、自由や民主主義、それに市場競争による資本主義(経済成長主義)は、いわば通常のやり方ではもはや機能しない、ということである。それはもう閉塞状態に陥っている。この閉塞を打破するには、何かとてつもない非常識な力量が必要とされるということであろう。

 その意味では、今回のトランプ政権がその側近として「宇宙を制する者が地球を制する」といいつのるイーロン・マスクを重用しているのは象徴的だし、その背後に、シリコンバレーの投資家ピーター・ティールが控えているのもまた象徴的であろう。トランプがシリコンバレーの革新者を利用するのか、シリコンバレーの革新者がトランプを利用するのかはわからない。あるいは訣別するかもしれない。しかし、シリコンバレーのいわゆる「テクノリバタリアン」と、トランプの「米国第一主義」を結びつけ、徹底した技術革新によって、宇宙規模の舞台へと次元を上げようと彼らはしている。そこまでしなければ、この閉塞状態を突破できないという意識が底に流れていることも事実であろう。

 世界中で、「近代リベラリズム」といういわば「公式的価値」が力を失い、人々が「ホンネ」ともいうべきむき出しの権力やカネや根源的な感情へと向かっている。またそこに姿を現すのは、その国の歴史・文化を背景にした一種のナショナリズムである。

 ロシアと西欧の対立の背景には、両者の歴史と宗教が横たわっている。イスラエルとイスラムはいうまでもない。トランプを支持する福音派や一部のキリスト教はアメリカン・ナショナリズムと結びついている。彼らは米国はキリスト教国家であることを公然と述べる。

 明らかに「トランプの時代」は、一筋縄では捉えられない。「リベラルな価値」というグローバリズムを支えた価値基準が力を失う時代は、多様な試みが多相的で複雑に絡みあう時代である。この意味で、我々もまた、常に複眼的にかつ大局的に世界を見る必要があるだろう。

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Wedge 2025年2月号より
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題

「こういう運命だったと思うしかない」輪島市町野町に住んでいた小池宏さん(70歳)は小誌の取材にこう答えた。1月の地震で自宅は全壊。9月の豪雨災害時は自宅周辺一帯が湖のようになったという。能登半島地震から1年。現地では今もなお、土砂崩れによって山肌が見えたままの箇所があったほか、瓦礫で塞がれた道路や倒壊した家屋も多数残っていた。日本は今年で発災から30年を迎える阪神・淡路大震災や東日本大震災など、これまで幾多の自然災害を経験し、様々な教訓を得てきた。にもかかわらず、被災地では「繰り返される光景」がある。能登の現在地を記録するとともに、本格的な人口減少時代を迎える中、災害大国・日本の震災復興に必要な視点、改善すべき方向性を提示したい。


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