2025年2月14日(金)

WEDGE SPECIAL OPINION

2025年1月22日

 2025年1月20日、ドナルド・トランプが第47代米国大統領に就任する。「トランプの時代」の第二幕である。前回の第一幕(16〜20年)は、突然生じた「トランプ現象」によっていわば「はずみ」で誕生した特異現象であるかのようにも見なされたが、今回はそうではない。まぎれもない勝利であり、米国民は、この異形の人物を選んだのである。しかも、上院、下院共に共和党がとり、連邦裁判所の判事も共和党が多数を占める。またトランプは、行政府のスタッフを大幅に入れ替えると豪語している。独裁者という言葉は適切ではないが、過半の米国民が、強権的な大統領を待望したことになる。

ゴミが散乱する大統領選後のハリス陣営の集会場所。民主党は環境への意識が高いはずだが……(KENT NISHIMURA/GETTYIMAGES)

 このことは何を意味しているのだろうか。私には、「トランプ現象」ほど、今日の文明の末期的状況を示すものはないと思われる。

 改めて振り返っておくと、トランプの勝利、もしくは民主党の敗北を導いた要因は次の三つであった。

 第一に、経済問題。いわゆる「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」における白人労働者層の不満があり、そこにコロナ後のインフレが追い打ちをかけた。もともと民主党の地盤であった工業地帯の衰退に対して、有効な政策を打てない民主党を白人労働者層は見限った。

 第二に、LGBTQや移民を中心とする弱者の権利を唱える民主党の指導層が、実際には金持ちエリートのセレブであるという欺瞞への批判がトランプ支持へと向いた。言い換えれば、進歩的で理想的なリベラルな思想を打ち出す民主党よりも、現実生活に目を向けるトランプを大衆は支持したということである。

 第三に、民主党の、あまり腰の定まらない対外政策の失敗である。ロシア・ウクライナ戦争への関与、混乱をきわめる中東への中途半端な姿勢。それらは世界秩序を生みだすにはいたらず、米国の利益にもならない、という批判がでてくる。

 これらは一見したところ民主党を中心とする米国の国内問題のように見えるが決してそうではない。我々が目撃しているのは、まさしく、冷戦後世界を組み立ててきた構造が世界規模で音を立てて崩れているという様相ではないのだろうか。


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