或る西側の元外交官は、トランプは経済的なインセンティブに過剰な信頼を寄せたと言う。核合意から18年に離脱したのもそれである。
トランプは、核合意は解体するしかない基礎が劣悪な建物だと見ていると彼の補佐官は同盟国に告げた。核合意は不完全であったが、それでもイランに真の制限を課した。しかし、トランプの建て替え計画はより悪かった。彼は、より手厳しい制裁にイランは速やかに屈服し、その支配者は新たな取引を懇請すると主張したが、そうはならなかった。
核兵器計画を放棄し海浜リゾートを開発するようにとのトランプの招待に北朝鮮の金正恩が揺れることはなかった。元外交官の見解では、トランプには二度とも彼の「海外に関する知識の大きな欠落」、そして米国は外国の戦争と手を切るべきだとの彼の直感が制約となった。燃える世界では取引の極意には限界がある。
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与しやすい相手にはすでに揺さぶり
この記事は、トランプが誇る「取引の極意」の盲点を一期目の彼の行動に基づいて軽妙に書いたものである。彼は米国の同盟国・同志国に対しては巨大な交渉上のレバレッジを有するが、情け容赦のない独裁者はトランプ流の取引に抵抗し手古摺る相手だ、と観察している。
前者の例は欧州に圧力をかけて国防費の国民総生産(GNP)比を上げさせたことであろう。後者の例は、核合意を巡るイランとの対立であり、非核化を巡る北朝鮮との交渉だった。
彼の取引は解体を得意とするが、解体した後、それに代わる新たな構築物を作ることは苦手とする特徴があることも記事は指摘している。核合意を潰したが、かえってイランの核開発を招いた。
中国との関税取引の評価ははっきりしない。北米自由貿易協定(NAFTA)を新NAFTA(USMCA)で置き換え得たのは成功例の一つであろう。
トランプは就任前からカナダ、パナマ(パナマ運河)、デンマーク(グリーンランド)に揺さぶりをかけている。与し易い相手と見ているに違いない。グリーンランドは一期目の19年8月にも買いたいと言ったことがある。通行料が高額で「ぼったくり」だとしてパナマ運河の運営権を取り戻したいようであるが、この記事によれば、この運河について不満を提起するのも今回が初めてではない。
