2025年2月14日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年1月21日

 2024年12月10日付のEconomist誌は、トランプの一期目を検証しながら、彼の「取引の極意」には限界があることを論じるコラムを掲載している。

(ロイター/アフロ・dikobraziy/gettyimages)

 トランプは、二期目の政権で、同盟国や米国から利益を得ている諸国に対しては巨大な力を行使するだろう。しかし、敵に対する彼の力はそれほど確かではない。

 トランプはあらゆる前線で交渉に自信があるようである。カナダ、中国、欧州連合(EU)、メキシコ等は、輸出に対する関税に備えるよう警告されている。同時に、トランプはロシアのウクライナとの戦争を24時間以内に終わらせると約束している。彼はハマスに2023年10月7日にイスラエルで取った人質を解放するよう、さもなくば「米国の長く豊かな歴史で叩かれた誰よりも酷く叩かれるだろう」と警告している。

 このやり方の強みと限界は一期目のトランプを近くで観察した当局者には明らかである。トランプは米国経済を世界で最も価値ある不動産のように語り、過去の大統領は、外国がわずかの賃料を払うことで良しとするお人好しだったと考え、賃料の見直しを強行しようとしている。

 トランプ政権一期目の17年6月、パナマの大統領は、なぜ米国の軍艦はパナマ運河の使用料を払っているのかとトランプに問われた(運河は99年に米国からパナマに返還された)。トランプは、運河を放棄したのは間違った取引で「取り戻すべきだ」と語ったと当時の米国大使は回想する。

 別の元当局者は、トランプが同盟諸国に対して、不動産開発業者として、日常的に値切っていたのを見た。「彼はサブコンから金を巻き上げた」「同盟国はサブコンのようなもの」と言う。

 トランプは、「破壊を要することに対しては解体用の鉄球」だったと元当局者は続ける。しかし、より頑丈な別の物を構築するとなると、彼の実績はまだら模様である。

 トランプが就任すると、同じ盲点が表面化し得る。プーチンは恐ろしい数のロシア人の命を犠牲にしてウクライナ奥深くに進撃し続けることを厭わない。プーチンがウクライナで占領地を拡大しつつあることに鑑み、なぜトランプはロシアに戦争を近く止めさせることが出来ると想像するのか訝る当局者もある。ハマスを攻撃するとのトランプの脅迫も同様に説得的でない、なぜなら、ハマスはその狂信的な目標を前進させるためならガザが破壊されることを厭わないからである。


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