2025年6月17日(火)

トランプ2.0

2025年1月21日

「降伏した」抗議運動

 筆者は、17年のトランプ大統領就任式当時、ワシントン滞在中だった。就任式が行われた議会前の広場には数十万人のトランプ支持者たちが全米各地から詰めかけ、8年ぶりの共和党大統領の誕生を祝福した。

 しかし、その翌日には、広場からペンシルベニア通をへてホワイトハウスに至る沿道で、それ以上の規模の「Women’s March」と銘打った抗議集会、パレードが行われた。警察発表によると、参加者は約50万人にも達した。

 移民政策、健康保険制度、人種差別など参加者たちの抗議の対象は様々だったが、圧倒的多数の市民たちにとっては、「初の女性大統領誕生」の夢が打ち砕かれたことに対する怒りと失望のはけ口でもあった。

 「Women’s March」は首都ワシントンのほか、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ボストンなど全米主要都市でも同時に展開され、当時の推計で参加者「100万人超」という史上最大規模の政治イベントとして記録されている。

 しかし、女性大統領の誕生は、昨年の選挙でも実現しなかった。そしても、今回も“女性の大敵”とされてきたトランプ氏が返り咲いた。

 今年は就任式2日前の18日、ワシントン目抜き通りでトランプ再登場に反対する抗議デモが行われたが、参加者は数千人規模にとどまった。主催者側は「6万人程度」の参加を予告していた。

 16年大統領選でトランプ陣営の参謀を務めた共和党ストラジストのデービッド・アーバン氏は、ワシントン・ポストとのインタビューで前回抗議集会を回想した上で「レジスタント運動はもはや、過去のものとなった。民主党は今や完全に降伏した」とまで言い切っている。

 米マスコミの一部では、民主党の現状について「まるで元王者にリング上で完膚なきまでに打ちのめされた挑戦者」との論評まで出ている。

トランプ政策を“支持”する民主党議員

 議会民主党内では、すでに亀裂が生じ始めている。

 去る1月16日の下院本会議で、性犯罪で検挙された永住権のない外国人滞在者の即時国外退去を認める移民法改正案の審議が行われ、賛成多数で可決されたが、共和党議員全員のみならず、民主党議員61人がこれに相乗り投票し、注目を集めた。

 他の民主党議員144人は「裁判の判決を待たずに即時国外退去処分は憲法違反」などとして反対投票した。

 翌17日にも、窃盗、強盗容疑で検挙された外国人滞在者を国外退去させる関連法案の下院審議でも、民主党議員48人が支持投票しただけでなく、上院審議でも民主党議員10人が造反し、共和党議員とともに支持に回った。

 上下両院で二桁に上る民主党議員が共和党側のタカ派的主張に賛意を示したことは、かつてなかった事態であり、「全国民主党委員会」(DNC)本部内でも、これ以上の党内分裂を避けるための対策に追われている。


新着記事

»もっと見る