また、議会民主党の重鎮、チャック・シューマー前上院院内総務までも、トランプ氏が就任前に、「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に名称変更すべきだと唐突な発言をしたことについて、「就任後、大統領とじっくり協議したい」として同調のシグナルを送ったほか、他の数人の民主党上院議員も、トランプ氏の意を受けたイーロン・マスク氏が陣頭指揮する「政府効率省」の行政について協力していく姿勢を示している。
共和党陣営が、こうした民主党側の動揺ぶりや、トランプ大統領への媚、へつらいぶりを歓迎していることは言うまでもない。
切り崩しにもかかるトランプ
それに加え、トランプ氏自らが大統領就任前から、民主党支持基盤の切り崩しに乗り出したことが話題に上っている。
民主党有力政治家たちをフロリダ州「マール・ア・ラゴ」に居を構える豪華邸宅に招き入れ、非公式会談を行ってきたことは、その一例だ。
去る1月9日、トランプ氏は、民主党のジョン・フェターマン上院議員(ペンシルベニア)と食事を共にしながら懇談した。懇談後のトランプ氏の説明によると、二人は、日本製鉄によるUSスチール買収問題、移民問題、中東情勢などについて意見交換したという。
また、フェターマン議員の印象について「彼は保守派でもリベラル派でもなく、良識派で善良な人物だ」と好意的なコメントもしている。
これに対し、フェターマン議員も「米国の最高指導者と率直な意見を交わすことは、党派にかかわらず、重要なことであり、とても有意義だった」と語った。フェターマン議員は、その直後に行われた連邦議会審議で、共和党側が提出した移民関連法案に支持投票している。
同審議では、ヒスパニック系のルーベン・ガイエゴ民主党上院議員(ニューメキシコ)も、賛成に回っており、ワシントン政界筋では、トランプ大統領が今後、黒人のみならず、民主党のヒスパニック支持基盤切り崩しにも乗り出すとの観測まで出ている。
続いて14日には、トランプ氏は黒人のエリック・アダムズ・ニューヨーク市長を同じ敷地内に所有するカントリークラブに招き、会談した。会談後、アダムズ市長は記者団に「ニューヨークの治安、市政、移民、そして国全体の問題について話し合い、大変有意義だった」と語った。
アダムズ市長は現在、汚職、買収などの容疑で連邦捜査局(FBI)に刑事告発されており、有罪判決の可能性が濃厚と報道されている。しかし、トランプ氏は市長の起訴発表以来、「エリックも自分も、故なき検察の犠牲にされてきた」などと、同氏に対する同情的コメントをしてきたほか、「大統領就任後、特赦も念頭にある」とも語って来た経緯がある。
今回二人が直接会談したことで、近くアダムズ市長の恩赦の可能性はほぼ確実視されている。