2025年12月5日(金)

田部康喜のTV読本

2025年1月24日

 先の石川県の危機管理監の飯田さんは次のような提案をする。

 「やはり、連携する機能、統括する機能が脆弱だったのではないか。警察にしても、消防にしても、自衛隊にしても、災害対応や救助、救出のプロ集団です。正直我々も3つの機関を束ねて調整するというところまで実は思っていませんでした。

 国のリーダーシップが必要です。災害対策の責任は当然、地方自治体にあります。しかし、これだけの大規模な災害になると、都道府県レベルや市町村レベルでは到底対応できない。やはり、国が前面に出て対応するよう体制もそろそろ作らないといけない」と。

災害時にどう情報を伝達するか、重要な課題だ(NHKスペシャル番組ホームページより)

 こうした国が前面にリーダーシップを発揮する、新たな組織として「防災庁」あるいは「防災省」をつくろうとしているのは、石破茂首相である。

 災害情報をいかに収集するのか、という視点が欠けていてはどんな連携組織をつくっても意味はない。地方自治体は、情報をまとめる機能になれている。

 ドローンや自動運転車などの新しい技術が進展すれば、情報を収集できるようになって、初めて連携機能が図られる。防災関係の省庁の中から、組織を切り出して新たな「防災庁」「防災省」をつくっても機能しない。

全国的な課題である災害による「孤立」

 「映像の世紀」を担ってきたテレビの震災報道は、いうまでも情報を取りにいくものである。それによって、震災対策の新しい視野を切り開いていく。

 今回のNHKスペシャル『ドキュメント 能登半島地震―緊迫の72時間』は、地震によって発生した火災に見舞われた輪島市、津波が襲った珠洲市など、各地に被災当初からカメラを入れた映像を綴っていく。

 能登半島地震による死者は2025年1月9日現在、災害関連死も含めて505人。全貌は明らかになってはいないが、そのうち消防などへの通報時点で72人に生存の可能性があったと推測されている。道路と通信網の寸断による「孤立地区」の発生が原因である。

 能登半島地震においては、発生の1月1日から一夜明けた時点で、道路の通行止めが185区間、土砂災害が450カ所余りでている。

 能登半島で発生した孤立地区は、静岡県の伊豆半島や千葉県の房総半島などでは同様の事態を迎えるのではないのだろうか。取材班は、金沢大学准教授の青木賢人さんと共同して能登半島の事例を分析したところ、全国の「孤立可能性地区」を割り出すと、5万6000地区になる。かつ、その人口は1200万人と推定する。しかも、孤立可能性地区は都市部でも発生する。


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