2025年2月11日(火)

田部康喜のTV読本

2025年1月24日

 “昭和100年”にあたる今年から、直前の大正12(1923)年までさかのぼるならば、映画とテレビの映像の世紀に重なる。能登半島地震からわずか1年でも、テレビの映像は列島を襲う大災害について予想されている、首都直下型や東南海地震などの災害対策に新たな知見をもたらしている。

(gyro/SolidMaks/cyano66/aetb/gettyimages)

「防災庁」では解決しない情報伝達機能

 NHKスペシャル『ドキュメント 能登半島地震―緊迫の72時間』(1月1日)は、被災から生存率が下がるとされる72時間に起きた出来事を時系列に追った。家族を失った被災者の証言をていねいに描くとともに、被災地の現場で何が起きたのか、映像をとらえている。

 ここではまず、災害の対応にあたる責任を担っている地方自治体と、災害報道の決定的な違いについて1点述べておきたい。自治体は基本的に行政政策がどのように地域に影響を与えているか、その成果を「まとめる」のが通常の業務である。言い換えれば情報を待つのである。

 災害報道は、災害の実態を「取材」つまり「まとめる」のではなく実態を収集していく役割を担っている。つまり情報を取りに行く。

 能登半島地震は、津波とその後の豪雨の影響もあって、道路と通信網が断絶されて、自治体がその実体を把握して、まとめるのが困難な局面があった。

 石川県危機管理監である飯田重則さんは、次のように振り返る。

 「(生存率が高まる)72時間以内にいかにスピーディに効果的に対策していくかと考えた。(しかし)だいたい倒壊家屋が何軒くらいか、道路の陥没はどの程度か情報が入ってくるのだが、それが役場ルートでは入ってこなかった」

 これに対して、輪島市防災対策課長の黒田浩二さんは証言する。

 「人的被害、建物被害でもどんどん増えていく状況でしたので、正直うちとしては、すべての地区が孤立しているというイメージですよね。現場と石川県にいる方との情報のマッチングがなかった」

 災害現場には、自衛隊や他の自治体の救援チームなども入る。現地の地方自治体との初動段階での「連携」が必要であるが、命令系統を統一するのは容易ではない。


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