最新技術で明らかになる地震被害の〝原因〟
NHKは、過去の映像を生かしてNHKスペシャル『映像記録 阪神・淡路大震災―命をめぐる30年の現在地』(1月17日)も放送している。国内初の震度7の地震にして、都市を襲った大震災を振り返ることは重要である。
震災地には、過去の惨状を語る「語り部」や記念館ができる。だが、映像の力はそれにも負けない。
筆者は、“昭和100年”とそれに先立つ大正時代の関東大震災などに関する、放送番組を録画して保存している。過去の映像であっても、最新技術を駆使すると新たな教訓を読み取ることができるからである。防災関係者にもそうした映像を見返して欲しい。
NHKスペシャル『映像記録 関東大震災 帝都崩壊の3日間』(2023年)は、前後編にわたって、大震災直後に震災地を撮影した映画カメラマンの映像を分析した。当時の映像を8Kでリマスター化すると同時にカラー化した。
これに当時の地震学者による帝都を襲った火事の発生と、その広がりの研究成果なども参照にして、関東大震災に新たな光をあてている。ちなみに、大震災はラジオ放送が始まる直前に発生した。
被災者は情報弱者のまま、10万5000人が命を失ったのである。首都直下型や東南海地震に際して、我々が取り組まなければならない事実がくみせぬほどあふれている。
8Kリマスターとカラー化による映像によって、防災研究者が映像の場所と時間を推定した。地震発生直後に火災が発生したというのに、当初の映像に映し出されていた人々は火事の煙の方向を見つめているだけで、笑顔を浮かべている人もいる。緊張感が見られないのである。
それが、周辺部にも火事が発生してくると、人々はいっせいに大八車などに家財道具を乗せて逃げ始める。東京市内で火災は134カ所も発生して、どうしてこのように広範囲に及んだのか、謎とされてきた。
新たな技術によって蘇った映像によって、家の瓦が落ちて木の屋根がむき出しになった上に、火の粉が飛び火となって火災を広げていったことがわかる。
