2025年12月5日(金)

世界の記述

2025年1月25日

 一方で、24年11月中旬、イラン国連代表部大使が、トランプ政権で政府効率化省を任されたと噂される富豪のイーロン・マスク氏と会談したと伝えられた。真偽は不明だが、仮に事実であるならば、両国は緊迫する中でも対話のチャンネルを維持したいものとみられる。

 イランでは、対外政策の意思決定主体は複数の機関によって分掌されており、相互がバランスを取り合う仕組みになっている。改革路線で有権者の支持を得て当選したペゼシュキアン大統領、そして国際協調路線を取るアラグチ外相は、欧米との対話に前向きな姿勢である。しかし、最高指導者、革命防衛隊、国家安全保障最高評議会(SNSC)は異なる考えを有している可能性があり、実際の対外行動は複数の主体の思惑が絡まりあった末に決められることになる。

 イランとしては、交渉相手から最大限の譲歩を引き出すべく、硬軟織り交ぜた戦術を講じるだろう。

抑止力回復に向けたいくつかのアプローチ

 それでは、イランは実際にどのようなアプローチで事態に対処するのか、あり得る方向性をいくつか挙げよう。

 第1に、欧米との軋轢が深まる中、イランの東方重視政策が継続されると考えられる。イランは21年3月には、イラン・中国25カ年包括的協力協定を締結した。これによって、制裁下でもイラン産原油を中国が購入し続けている。また、本年1月17日にはロシアと20カ年包括的戦略パートナーシップ条約を締結してもいる。イランとしては、仲間となる国を増やし国際的な孤立を解消するとともに、金融・原油取引制限の中でも外貨獲得ができる抵抗経済の確立を追求している。

 第2に、現在までイランは核開発を平和利用のためと説明してきているが、核ドクトリンを変更する可能性が取り沙汰されている。24年11月1日には、ハッラージー最高指導者顧問がメディアの取材に対し、もしもイランの生存が脅かされれば核政策を再検討する権利を持つ、と発言している。

 先立つ10月には、国会議員39人がSNSCに対し、イランは核兵器に向けた開発を促進すべきだと主張する書簡を送付した。これは、国内で抑止力回復に向けた声が根強いことを示している。

 第3に、軍事技術を不断に向上させ、それを誇示するかもしれない。実際、25年に入ると、1月10日に革命防衛隊が地下ミサイル都市を公開した他、13日には国軍が新たにドローン1000機の運用を開始したことが伝えられた。また、18日には、今度は革命防衛隊海軍が地下施設を公開、サラミ同隊総司令官は長距離ミサイルを発射可能な艦船用の地下施設の一つだと述べている。


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