2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2014年3月1日

 また、経済理論的に、PtoP仮想コインの世界経済への長期の影響を考えると、その規模が大きくなればなるほど、これまでのマクロ経済学的な枠組みから外れる状況となることが予想され、とくに各国および国際金融当局は、かなり手を焼く事態となってしまうかもしれない。

ビットコインの謎めいた誕生 

 実は、ビットコインの設計者は日本人ではないかと言われている。中本哲史氏という人物による「ビットコイン:P2P電子マネーシステム」という論文から生まれたとされているのだ。インターネット上にあるので誰でも読めるが、中本哲史氏が何者かに関しては実際には明らかになっていない。このあたりが、ミステリー的な興味をそそられる要因ともなっている。

 論文の内容についてだが、方法論に数学とテクノロジー由来の難解さはあるものの、アイデア自体は非常にシンプルなものだ。ひとことで言うならば「決まった数量のバーチャルなコインをインターネット空間に想定し、それをネットワーク上の各人が媒介貨幣的に使って取引を行う」ことの方法論と可能性である。

 そして、そのシンプルな役割を成り立たせるための仕組みがじつに巧妙かつ難解なのだが、必要最小限でポイントをおさえると、

(1)不正使用防止のため、ビットコインの受け渡しの全記録が公開される(この公開台帳は、使用者に関しては匿名)
(2)高度な暗号システムで台帳の更新をコントロールし、改竄を防止する
(3)その暗号システムの堅牢性はPtoPネットワークのコンピュータ能力で担保されている
(4)一連の台帳更新とそのプロセスの維持に貢献した人にビットコインが振る舞われる(ただし枚数に上限がある)

 ということになる。

*論文では、(1)(2)のところで「ブロック」「ブロックチェーン」、(2)(3)のところで「プルーフ・オブ・ワーク」「良心的なノード」、(4)のところで「マイニング(発掘)」といった専門用語が出てくるのだが、それらに興味のある方は、より専門的な解説を別途参照のこと

 ビットコインを得るためには、前出のMt.GOXのような取引所で、手持ちの円を交換する。アカウント開設のための本人認証のハードルはかなり高いが、銀行を介さず世界中どこでも送金することができ、手数料もほとんどかからないことなどがメリットである。

ビットコインの可能性と限界

 では、ビットコインは、これまでの通貨(や電子決済)と何が違うのか。


新着記事

»もっと見る