2024年12月23日(月)

world rice

2014年3月31日

 国際的なコメの価格は、需要と供給のバランスで決まるものですが、稲作の盛んなアジア諸国では、時として「政治」が市場に介入し、その需給バランスを捻じ曲げてしまうことがあります。しかし、選挙など目先の利益にとらわれ、長期的な判断力を失うと、結果的に国力を低下させてしまうかもしれません。

 例えば、タイ。長年、コメの輸出量で世界一を誇り、タイ米の生産動向が国際相場の基準になっていますが、2011年度と12年度の輸出量はインドとベトナムに抜かれ、3位に転落しました。米国農務省の統計では13年度は1月時点で2位まで戻りましたが、1位のインドとの差は大きいままです(=図参照)。

 タイの凋落の背景にあるのが、政治の市場介入です。タイでは11年8月にインラック首相が就任し、同年10月からモミ米を担保にした生産者向けの融資制度を始めました。融資の返済は皆無で、事実上の買い上げ制度。タイ政府はコメの品質を問わず、ほぼ全量を無制限で市場価格より5割ほど高く買い上げているようです。

 そのため、生産者は作付けを拡大し、収穫されたモミ米をせっせと政府指定の倉庫に運び込みました。需給バランスを無視して高額で買い上げたコメは当然、市場での価格競争力を失い、売れないまま大量の在庫として残りました。

 では、大量の在庫米をどう処分するのでしょうか。タイ政府が狙うのが、政府間取引による他国への売却です。一部報道によると、昨年秋、中国との間で今後5年間に民間向けも含めて計600万トンのコメを輸出することで合意しました。

 米国農務省の統計では、中国の輸入量は10年度までは約58万トンでしたが、11年度以降は300万トン前後まで拡大しています。コメが不足しているわけではなく、ビーフンなどの加工食品用や酒造用として安価な加工用米の需要が高まっているのが理由のようです。

 タイでは現在、国内を南北に縦断する総距離2500キロの高速鉄道の建設が計画されており、日本のほか、中国や韓国、フランスが受注を目指しています。中国による在庫米の買い上げは、今後、インフラ受注にも影響するかもしれません。


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