農林水産省によると、日本の1人当たりの年間コメ消費量は1962年度の約118キロをピークに減少し、2012年度は約56キロまで落ち込みました。政府はコメの価格を維持するため、生産調整(減反)して生産量を抑えていますが、潜在的なコメ余りの問題が解決するわけではありません。
こうした国産米の新たな売り先として、今、海外市場、特に台湾やシンガポールなどのアジアに輸出しようとする動きが賑やかになっています。最近では、13年夏に新潟県がシンガポールで県産米の試食会を開いたとの報道もありました。
確かに、国産のコシヒカリなどは食味も品質も良く、ご飯として食べれば世界一だと思います。しかし、その最高級のコメを現地のコメの何倍ものお金を出して買ってくれる消費者がどれほどいるでしょうか。実際には、日本で想像するよりもはるかに少ないと言えるでしょう。
例えば、台湾は02年のWTO(世界貿易機関)加盟時に日本と同様、コメの輸入制限を維持しましたが、その見返りとして課せられたミニマムアクセス(最低輸入義務量)米を年間10万トン程度輸入しています。台湾のコメは、短粒種が主流で、日本からも年間1000トン前後のコメが輸出された実績もあり、日本のコメが受け入れられやすい環境にあります。
しかし、日本のコメは、現地では百貨店などで高級品として扱われ、非常に少ない量しか売れないのが現実です。ジェトロ(日本貿易振興機構)によると、12年2月の百貨店Aでは台湾産米が2キロ=176台湾ドルで売られる中、新潟県産コシヒカリは2キロ=580台湾ドルと3倍以上の値段でした。量販店では、台湾産米が2キロ=129台湾ドルでしたので、日本のコメは高級品なのです。
一方、国土面積の狭いシンガポールは、自国でコメを生産しません。消費するコメは全て輸入米です。しかし、近隣にはタイやベトナムなど、コメ輸出国がひしめいており、米国からも輸入しています。
08年の輸入実績(参照=表)では、タイ産米のシェアが高く、日本産米は微量でした。しかし、1キロ当たりの価格は日本産米がダントツで高額です。こうしたマーケットに入る勇気には、敬意を払うものです。