2025年2月7日(金)

教養としての中東情勢

2025年2月4日

 とりわけ中東では、米国のプレゼンスが弱体化するのを尻目にロシアの威信が高まり、両基地はロシアにとって世界戦略上、なんとしても維持しなければならない存在になった。だからこそ今回、大型代表団を送り込んでシャラア氏らを説得しようとしたわけだ。

プーチン氏自ら出馬も

 中東のメディアなどによると、ロシア側はシャラア暫定大統領らとの会談で、駐ダマスカス大使館の早期再開や、2つの軍事基地をこれまで通り維持したい意向を表明した。さらに今後開催が予定されている「シリア国民融和会議」に親ロシア派の2組織を参加させるよう求めたという。

 これに対し、シリア側はアサド氏の身柄引き渡しを要求、シリア国内で裁判にかけるための協力を求めた。ロシア側は拒否したとみられている。またロシア軍の爆撃で死んだ住民らへの金銭的な補償も要求した。これについてもロシア側が難色を示したとされる。

 結局のところ、焦点の軍事基地の維持については「継続協議」とすることになり、決裂を回避した格好。「ロシア側がシャラア氏をモスクワに招待するというプーチン大統領からの意向を伝えたのは間違いない」(ベイルート筋)との見方も強い。プーチン氏自らの出馬で説得したいとの考えのようだが、シャラア暫定大統領周辺のロシアに対する憎悪は深く、容易にはいきそうにない。

 ただ、暫定政府側にも弱みがある。それはシリアが保有する兵器のほとんどがロシア製だということだ。シリアから全面撤退したイランに頼るわけにもいかず、武器や弾薬の補給はロシアに依存するしかない。

 対外的にはイスラエルが国連監視のゴラン高原の非武装地帯(DMZ)を超えてシリア領に越境、ダマスカスを遠望できるヘルモン山の山頂付近を占領した。国内的にはイスラム国(IS)の復活や武装組織同士の衝突などがあり、こうした内外のリスクに対応するにはロシアの軍事面での支援が必要だ。


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