2025年2月7日(金)

教養としての中東情勢

2025年2月4日

「シリアなんて放っておけ」なトランプ

 米紙ワシントン・ポストによると、バイデン前政権末期の米情報機関がシリア新政権に秘密接触し、ISのテロを警告、宗教施設の爆破を未然に防いだという。シャラア暫定大統領が属していた過激派組織「シリア解放機構」は元々、国際テロ組織アルカイダの一分派だったが、ISとは犬猿の仲。米国とともにISの復活を阻止するという点では一致しており、水面下で情報分野での共闘を組んだということだろう。

 同紙によると、ISはダマスカス郊外のシーア派の聖地サイイダ・ザイナブで爆弾テロを計画していたが、米国から情報を提供された新政権が1月11日、ISを摘発し、テロを阻止したという。米国は昨年のクリスマス前に国務省の高官がダマスカスでシャラア氏と会談、米政府が同氏にテロリストとして賭けていた賞金1千万ドルを取り下げることを伝えたという。

 しかし、トランプ大統領は「シリアなど放っておけ。われわれの戦争ではない」などと不介入の方針を鮮明にしており、米・シリア関係が好転するかどうかは不明だ。米国は現在「IS復活阻止とイランの動きを監視する」という名目で2000人の部隊をシリア東部などに駐留させているが、トランプ氏が全面撤退を命じる可能性もある。

 第一次政権でもトランプ氏はシリアからの全軍撤収を主張したが、国防総省の反対で約900人を残留させざるを得なかった。しかし今回、同氏は二度と最高司令官の命令に反抗させないとの考えといわれ、駐留軍の残留も含めシリア新政権との関係の行方が焦点だ。

 ロシア側は米軍の完全撤退はシリアにおけるロシアの影響力を高める上ではプラスとみなし、トランプ氏の撤退決断が軍事基地存続に有利に働くと考えているようだ。「トランプ頼み」という側面も強い。

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