MLBにとって日本は大きなマーケット
「PLAY BALL」のイベント時に校庭に設けられた簡易フェンスには、MLBのロゴに加え、協賛企業名も印字されていた。JAL、伊藤園、JTBといずれも日本の大企業だ。
「PLAY BALL」が野球未経験の子どもたちを対象とするのに対し、AIG損保が特別協賛する「AIG presents MLB CUP」は、次世代の野球界を担う球児である小学3~5年を対象とした野球大会だ。16年に創設されたこのイベントの狙いも、野球人口拡大に繋がる普及プログラムとなっている。全国各地区の予選を勝ち上がったチームで行われるファイナルラウンドは毎年、復興支援として宮城県石巻市で開催される。
1995年に野茂英雄氏が本格的に日本人メジャーリーガーの扉を切り開いてから今年で20年。こうしたイベントには、日本出身の元メジャーリーガーを招聘できる強みがあり、昨年7月はファイナルラウンドに先立ち、レッドソックス時代にワールドシリーズの胴上げ投手にもなった上原浩治氏による野球教室が仙台市内で開催された。
近年はほぼ毎年のように日本球界の主軸打者やエース級がメジャーへ移籍する。現在の野球をする子どもたち、野球観戦が好きな子どもたちも物心がついたころから、メジャーでプレーする日本選手、移籍していく選手を当たり前のように見てきた。日本の野球人口は少子化やスポーツの多様化によって、減少の一途をたどる中、メジャーによる野球振興策が、国内の野球をする子ども、見る子どもたちの増加につながる利点は大きい。ただ、子どもたちの関心がダイレクトにメジャーへ向けられることも懸念される。
ドジャースとパートナーシップなどの契約を締結する日系企業は10社以上あり、大谷選手との契約である7年総額7億ドル(1014億円=契約当時)を上回る見返りを手にできるとの報道もある。野球人気は、世界的に市場が広がるサッカーなどと違い、北中南米と東アジア、豪州と地域が限られる。それゆえに、日本選手が所属するメジャー球団、リーグ機構(MLB)にとっても、日本は、有望選手の供給源だけではなく、ビジネス上においても魅力的なマーケットとなっている。
“鎖国”は有効な対策ではない
日本球界の対メジャーへの危機感も顕著で、大谷選手、山本投手の出場で盛り上がったドジャースとヤンキースによる昨季のワールドシリーズは、フジテレビが日本時間の午前中に地上波でライブ中継されただけでなく、日本シリーズの放映時間と重なる夜にも急遽ダイジェスト放送が行うことが決まると、日本野球機構(NPB)はフジテレビの日本シリーズの取材パスを没収した。1月20日の12球団監督会議では、NPBの選手らが、若者を中心に人気のMLBブランドのTシャツやキャップなどのアパレルを着用することにも異論の声が挙がった。ただ、“鎖国”のような対応は、支持されるとは限らない。