2025年3月17日(月)

プーチンのロシア

2025年2月10日

 24年のロシアのインフレ率は9.52%と公表されているが、モスクワの知り合いによれば、体感インフレ率は、桁が違ってさらに高いという。事実、24年ロシア国内のバターの価格は前年から26%も上昇している。

ライトアップされた国営百貨店

 経済の過熱を警戒するナビウリナ総裁が率いるロシア中銀は、ウクライナ侵攻以来、キーレート(主要政策金利)を引き上げ続けており、現在は21%という異常水準だ。25年1月27日付のロシア紙ロシスカヤ・ガゼータは、消費者ローンの平均金利がロシア上位20行で33%近辺と報じている。期間3年を超える法人向けローンの金利も30%を超えるという。

 この非常識に高い銀行金利は、今後の民間債務の膨張と不良債権の拡大を想起させる。ロシア中銀データによると、法人・個人向け融資残高は、ウクライナ侵攻前の22年1月から24年11月にかけて1.5~2倍の規模で急増しており、この傾向は、戦争が止まなければ今後も続くだろう。

 予算の3割超が国防費、中銀の政策金利が21%、法人向けローン金利が30%超……。これらの異常な数値の連関からは、ロシア経済を押しつぶすかのような曇天が次第にひろがりつつあることを思わせる。

「いずれは和平協議に」がロシア人の本音か

 もっとも、ロシア高等経済学院のロシア軍事・中露関係専門家のカシン博士は、「ロシアは制裁にうまく抵抗しており、少なくともあと1年は戦争に耐えることができる。前線で優位に立っているロシアが提示する条件にウクライナ側が同意することが賢明だ」とロシアメディアにて発言している。

 同博士に言わせれば、ロシア財政や金融セクターの不穏な動向には、切迫感をもって今すぐ戦争をプーチン大統領に止めさせるほどの威力はないということだろう。ただ、ロシア経済が、「ウクライナ侵攻から丸3年、さすがに無理がたたってきているため、戦争は出来ればもう止めた方がいい」という状況に陥りつつあるのも確かだろう。

 第2期目のトランプ大統領就任をロシア社会は、幾分冷めた面持ちで受け止めてはいるが、和平に向けた動きにつながることに期待していることに違いはない。ロシアの独立系世論調査会社レバダセンターによれば、24年10月の段階で、ロシア国民の55%が和平協議に移行することを望んでいる。

 モスクワで滞在したホテルで国営テレビチャンネル「ロシア24」をみると、トランプ大統領の映像が盛んに放映されていた。それら映像は、紅潮して相手を睨みつけるような、いつものトランプ氏というよりは、威厳と自信にあふれた演説の様子などが選ばれているように感じた。

 国営テレビを通じたクレムリンのプロバガンダは徹底している。ここからも目下、クレムリンがトランプ大統領に期待感をもっていることが窺い知れた。

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