19世紀半ばに北極圏で打ち捨てられた同艦を米捕鯨船が発見し、米英友誼の証として修理し送り返したことがあった。のちにその返礼として、同艦退役後、その素材の一部であるオーク材から机が作られ、ビクトリア女王からヘイズ大統領に贈呈された、その机を指している。
以来多くの大統領がホワイトハウスで執務机として用いて来ており、いわば大統領の机である。その机にマスク氏が向かっているということは、大統領の権力を握っているのはマスク氏ではないかというふうにも解せる挑発的なものであった。
それに対して、大統領は、『タイム』誌はもう廃刊したと思っていたととぼけて見せた。つい先日、自らがその表紙を飾り、そのことを「栄誉」と述べていた彼が同誌が健在であると知らないわけはなく、彼一流の返しであった。
別の記者は、ガザ地区のことを質問し、その次の記者は、中国のAIであるディープシークのことを尋ね、もはや日米首脳会談はそっちのけといった感じであった。次の記者は、自動車に対する関税のことを尋ねたため、流れは再び日米首脳会談関係に戻ると思われたが、その次の記者の質問はウクライナ問題についてであり、それに答えたのち、大統領は自ら質問セッションを打ち切った。その間、手持無沙汰であったろう石破首相は終始穏やかに座っていた。
共同記者会見でも冒頭の質問はマスク氏
午前4時過ぎ(日本時間)から始まった共同記者会見も似たような感じであった。石破首相と2人で撮った写真がよくうつっていると紹介したうえで、「彼のようにハンサムだったらいいのに、でも私はそうじゃない」と軽口をたたくなど冒頭から大統領はご機嫌であった。
日本のことをほめたうえで、日本が巨額な対米投資を予定していることを披露した。日本製鉄によるUSスチールの買収計画は、買収ではなく投資になり、これも米国内で雇用を増やす日本の対米投資の一環となるとした。また、日本に対する米国の貿易赤字が1000億ドルであることを是正しなければならないと指摘するのも忘れなかった。
これに対し、石破首相は、日米関係の重要性を述べたうえで、大統領と2人で「新たな黄金時代を切り開くのを楽しみにしている」と、大統領が就任式で使った「黄金時代」という表現を使って冒頭の発言をまとめた。
記者会見はトランプ大統領が自ら仕切る質疑応答に移った。トランプが最初に指名したFOXニュースの記者は、首脳会談の共同記者会見の最初の質問者にもかかわらず、いきなりマスク氏の政府効率化省のスタッフが連邦中央会計報告システムにアクセスを認められたことに民主党の議員が憤っていることについて質問した。トランプ大統領は動じず、政府で汚職や無駄が行われており、見つけなければならず、特に教育省について注目すると自説を展開した。
次の米国人記者が、日本の防衛費について質問した後、トランプ大統領は、石破首相に気遣い、石破首相も自分の気に入った記者をあてられるよう促したが、石破首相はそうしなかったため、日本人記者を続けて2人指名した。2人はそれぞれの首脳にお互いの印象を尋ねた。トランプ大統領は石破首相を「強い男」でもう少し弱ければ楽だったのにと軽口を交えつつほめ、石破首相も、怖い人かと思っていたが、実際会ってみると「誠実で、力強く、強い意志を持たれた方。合衆国と世界への強い使命感を持たれた方」と持ち上げた。
