次に指名された記者が日米の通商関係について質問したが、その次に指名された記者は、マスク氏のチームやFBIについての質問を繰り返し、申し訳程度に北朝鮮についての質問を付け加えた。最後の質問者も、マスク氏についての質問から始めたが、かろうじて最後に、日本は関税を課された場合報復するのかと日米関係絡みの質問をした。それに対して石破首相は、「仮定の質問にはお答えしかねます、というのが、日本のだいたいの、定番の国会答弁でございます」と巧みに切り返し、その返答に大統領は大喜びして会見自体を打ち切った。
日本はトランプがリラックスできる相手?
会談を受けて両国は、日米関係の黄金時代を追及する決意を確認した共同声明を発表した。そこには、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて共に協力することや、日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用されることの再確認などが盛り込まれていた。
首脳会談は終始和やかなムードで進められたが、それはなによりトランプ大統領がリラックスしていたことによるだろう。北大西洋条約機構(NATO)諸国の首脳は、米国と同盟関係にあるとはいえ必要とあらば耳障りなことを言う。中南米諸国は、米国が力で押さえつけているとはいえ、もともと反米の土壌があり、先日移民送還を当初拒否したコロンビアのように最初から従うとは限らない。イスラエルのネタニヤフ首相にしても、自らの政治生命の問題もあり、一筋縄ではいかない緊張関係にある。
それらに比べると日本は逆らう気配もなく、また、石破首相も会ってみると、大統領が最も嫌う、相手のことを値踏みしたりからかったりするような人ではないことは一目でわかったのであろう。
無事終了した首脳会談だが、予想外の不安が見えたとすれば、日本製鉄とUSスチールの問題ではないだろうか。「買収」ではなく「投資」という表現が今回始めて大統領の口から述べられた。
本来の日本製鉄の計画では、100%の株式を取得し完全に支配下に置く買収計画だったが、そうでないとすると、多くの資金を投入する一方、コントロールが十分に得られないのではないかという不安が残る。間もなくその案が明らかになるとされる。
首脳会談の席で大統領が口にし、首相も同意した「投資」に、不満があっても覆すのは難しいのではないだろうか。巨額の資金だけ提供し、構想したような展開にならないようにだけはなってほしくないものだ。石破首相が、土産物として持参した黄金の兜のような光輝く日米関係が訪れるかどうか今後に目が離せない。
