2025年4月17日(木)

トランプ2.0

2025年2月19日

幅広い分野で乱発される大統領令

 実際に、トランプ氏は去る1月20日、ホワイトハウス返り咲きと同時に、バノン氏の主張する“洪水”戦略に沿って、「連日3つ」どころか、それをはるかに上回る数の大統領令を次々に発動した。

 「Newsweek」誌によると、初日の1日間だけで発表された大統領命令は計26本に上っており、内容としては、カナダ、メキシコなど諸外国への関税発動、不法滞在者国外退去措置など、以下のようなものが含まれている:

・米国南部国境一帯を「被侵略地域」に認定し、大統領命令により「外国人侵略加担者」の一掃(=国外退去)を政府関連部署に指示。必要に応じ米軍部隊動員も許可

・「1月27日」を期して、バイデン政権が実施してきた「外国難民受け入れ計画」を即時停止させるとともに、各国に計画変更を通知

・米国内で生まれた子供に自動的に市民権を与える「出生地主義」(憲法修正第14条)の見直しについて関係省庁に指示。母親が「法的移民」でない場合の子供と夫には市民権を与えない

・メキシコ、カナダを含む「グローバル追加関税」発動について、商務省、通商代表部に指示するとともに、従来の「国内歳入庁」(IRS)に加え、(国外からの租税収入を大々的に推進するための)「国外歳入庁」(External Revenue Service=ERS)を新設

・バイデン政権下で進めてきた「電気自動車(EV)開発支援計画」を破棄するとともに、天然ガス、水力、バイオ燃料、原子力支援事業を推進

・「気候変動」の科学的根拠について再検討するための「大統領科学技術諮問委員会」を発足させる

・北極圏野生動物保護地域内での石油・天然ガス採掘規制措置の解除

・バイデン政権が推進してきた「多様性・公平性・包括性=DEI」政策に依拠した政府各省庁における規制を撤廃するともに、「DEI」関係の政府契約の洗い直しおよび「DEI」担当官の即時解雇。「LGBTQ」推進措置の撤廃。今後は「バイセクシャル(両性)」の存在を認めず、「男か女」のどちらかしか公的に認知しない

・2026年7月4日までの期限付きで「政府能率化省」(DOGE)を設置し、各省庁に配置された最低4人の専任スタッフは、無駄な事業や職場の実態について最高責任者のイーロン・マスク氏に報告させる

・政府関係の公務員、職員の新規採用を、移民局を例外として直ちに凍結。今後はオンラインによる自宅勤務を認めず、全員に出勤を命じる。ホワイトハウスの指示通りの政策遂行に異を唱える人物は解雇の対象とする

・「世界保健機関」(WHO)から脱退し、拠出金を凍結する

・世界各国へのこれまでの援助を停止し、政府専門機関である「米国際開発庁」(USID)の閉鎖と全職員の解雇

・国務省関連のあらゆる政策、プログラム、要員配置すべてを「アメリカ・ファースト外交」に沿ったものとするよう、ルビオ長官に指示

・全米37カ所の連邦刑務所で死刑判決後、終身刑として服役中の受刑者に対する前政権の特別措置を撤廃し、死刑を容認する。「薬殺」用薬品の調達を許可する。各州刑務所に対しても、死刑を勧告する

・ケネディ大統領暗殺事件のこれまでの非公開文書について「15日以内」に公開に踏み切るよう国家情報庁に指示。同じく、ロバート・F・ケネディ元司法長官、マーチン・ルーサー・キング牧師暗殺関連の非公開文書についても、「45日以内」に公開させる

・「アメリカの偉大さ」に敬意を表し、「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に改称

 ちなみに、第一期トランプ政権では発足初日に発動した行政命令は1本のみ、1週間合わせても5本だった。今回は3週間あまりで70件近くに達している。

 また、歴代大統領が発足1週間に発動した命令は、バイデン24本、オバマ5本、クリントン2本、ジョージ・W・ブッシュ1本、カーター1本となっており、今回、トランプ大統領による命令乱発ぶりは異常だ。


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