2025年4月17日(木)

勝負の分かれ目

2025年2月27日

 中谷選手は身長173センチと軽量級の中では上背があり、昨年10月の試合後に「僕の体のポテンシャルでみても、スーパーバンタム級でいけると思っている」と語り、今回の防衛戦前に向けた米ロサンゼルスでの合宿から帰国した際にも、井上選手との「世紀の一戦」について話を振られると「期待感がすごく高まっているのは感じている」と自覚する。

 対する井上選手が所属する大橋ジムの大橋秀行会長も今年1月、井上選手がスーパーバンタム級に戻すプランを明かした際に、「戦うべき相手がいる」と中谷選手の存在を示唆した。互いに場外での派手な言動パフォーマンスをしない“正統派王者”だが、当人たちが挑発的に口を開かなくても、機が熟すのは時間の問題となってきた。

うなぎ登りの一戦の価値

 そんな世紀の一戦に、“オイルマネー”も興味津々だ。

 サンケイスポーツの報道では、サウジアラビア国営の国際娯楽イベント「リヤド・シーズン」を主催する総合娯楽庁長官のトゥルキ・アルシェイク氏が2月7日(日本時間8日)、米スポーツ専門局ESPNのインタビューで、井上選手が12月にサウジアラビアで予定する世界戦の対戦相手に中谷選手を希望したという。トゥルキ長官はボクシングマニアとしても知られ、エンターテインメント産業を加速化させるサウジアラビアでは近年、プロボクシングのビッグマッチが次々と行われてきた。

 そして、井上選手は昨年11月、「リヤド・シーズン」と約30億円のスポンサー契約を結んでいる。契約内容には、試合時に着用するトランクスに「リヤド・シーズン」のロゴを着けることや、アンバサダー的な役割が含まれるだけで、試合の契約やファイトマネーは含まれていないという。

 中谷選手は2月24日の試合後、「これから統一チャンピオンになって、さらに上を目指していきたい」と意気込みを語った。「さらに上」に井上選手との対戦も含まれての発言だろう。

 井上選手は高校時代から圧倒的な強さで勝ち上がってきたエリート、対する中谷選手はもともと空手をやっていて、中学卒業後に高校へは進学せず米国へ単身で渡る武者修行で実力を培った。環境は大きく違えども、互いの強さは現在の日本ボクシング界で群を抜く。

 両者が交錯するタイミングは、いつ、どこで、そして夢のビッグマッチに付けられるファイトマネーの価値は――。壮大なストーリーが結実するゴングが鳴る瞬間が、刻一刻と迫ってきた。

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