2025年4月24日(木)

勝負の分かれ目

2025年2月27日

 「皆さん、ビッグバンは見られましたか」。勝利を収めた中谷選手は、リング上で余裕の笑みを浮かべた。

 この階級では初防衛を1回KO勝利、昨年10月の2度目の防衛も6回TKO勝ちし、今回も圧巻のKO勝ち。キャリアにおけるKO率は8割に達し、米専門誌が選定する全階級を通じた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」でも9位につける実力派にふさわしい試合内容だった。

 控えめな言動とは対照的に、ド派手なパフォーマンスで存在感を解き放つ27歳について、一部では「強すぎて、対戦相手が見つからない」との報道もある。こうした中で、中谷選手が倒す標的に見据えるのは、他団体の王者。つまりは王者統一戦となる。

統一戦の先には

 この日の試合後、IBF同級王者の西田凌佑選手(六島)がリングに上がった。中谷選手は前戦の勝利インタビューで「WHO'S NEXT?(次は誰?)」と呼びかけていたが、今回は「西田選手、やりましょう」と統一戦相手に名指しした。

 西田選手も「ずっとやりたいと思っていた。ぜひ、お願いします」と応じた。世界王者には各団体が対戦相手を決める指名試合が義務づけられているため、次戦での対決実現は難しいものの、今後に楽しみな状況が生まれた。

 さらに、ボクシングファンならずとも期待するのが、一つ上の階級で4団体統一王者に君臨する井上選手との「世紀の一戦」だ。

 海外メディアによれば、PFP2位にランク付けされる井上選手は今後、6月に米ラスベガスでWBC同級1位アラン・ピカソ選手(メキシコ)と対戦し、9月に日本で防衛戦を行い、12月にサウジアラビアで今年4戦目となる試合を行うという。9月と12月の対戦相手は現時点では未定だが、防衛戦の相手はWBA同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ選手(ウズベキスタン)で、その後は1階級上げてWBA世界フェザー級王者ニック・ボール選手(英国)との5階級制覇の一戦に挑む可能性が報じられている。

 井上選手と中谷選手の直接対決が実現するには、井上選手はいったん階級を上げ、中谷戦に向けて再びスーパーバンタム級へ落とすことになり、中谷選手もバンタム級で統一戦に勝利した上で井上選手が待つスーパーバンタム級へ上げることになる。

すでに実現への計画が

 いまだ階級が違う両者による「カード実現」がささやかれるのは、漫画の世界のようにも見えるが、実際には歴史的な一戦の来年中のプラン実行が、現実味を帯びている。

 東京スポーツは、井上選手の共同プロモーターでトップランク社のボブ・アラム最高経営責任者(CEO)が来年の夏か秋に計画しているとした米メディアの報道を紹介。トップランク社は昨年7月に中谷選手側とも共同プロモーター契約を締結済みで、両者の対戦会場には具体的に東京ドームの名前も挙がる。

 両者の対決を望む声は、決して格闘技の世界の“あおり”ではない。両者の対戦に関する記事はスポーツ紙に限らず、2月25日付の朝日新聞も、中谷選手を「主要4団体の王座を日本勢が締めるバンタム級で頭一つ抜けた実力」と評した上で、「1階級上の4団体統一王者・井上尚弥(大橋)との対戦も期待される」と報じる。筆者が確認した範囲では、読売新聞や毎日新聞の記事でも、将来の井上戦に関連した内容に触れていた。


新着記事

»もっと見る