2025年12月5日(金)

プーチンのロシア

2025年2月28日

ウクライナ抜きで進む一方的な交渉

 トランプ政権はすでにその発足以前から、プーチン政権に水面下でアプローチし、「政権発足から24時間以内にロシアとウクライナの停戦を実現させる」との目標に向け動いていたことは間違いない。政権幹部となる人物らは昨秋ごろには、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を「一定期間凍結させる」との内容をロシア側に打診していたとみられる。ただ、ロシアのプーチン政権は「10年NATO加盟が凍結されることが、何の差を生むのか」と一蹴した。

 そのため当初の計画は崩れたが、大統領となったトランプ氏には、対露交渉を緩める考えはなかった。2月上旬に、ロシアで懲役中だった米国人教師が釈放されたことを「重要な一歩」だと位置付けて、一気に交渉を加速。12日にプーチン氏と電話会談し、18日には、欧州やウクライナを無視する格好でサウジアラビアの首都リヤドでロシアのラブロフ外相と米国のルビオ国務長官がウクライナ、欧州連合(EU)抜きで会談し、高官級による交渉を加速することで合意した。

 トランプ政権は一方で、ウクライナに対し、同国の5000億ドル規模のレアアース(希土類)の開発利権を支援の対価として要求し、交渉を開始。見返りとなる安全保障供与が示されなかったことから、ウクライナ側は拒否したが、ゼレンスキー大統領が28日に訪米し交渉を進めるもようだ。

 トランプ政権はまた、紛争終結後に欧州がウクライナに駐留軍を出すことには反対しないとした。ウクライナの戦後の安全保障を、欧州側に一方的に押し付けた格好だ。

 米側の提案をゼレンスキー氏が拒否する姿勢を示すと、今度は同氏を「選挙によって選ばれていない独裁者だ」と断じ、根拠もなく「彼の支持率は4%に落ち込んでいる」と言い切った。さらにゼレンスキー氏こそが「和平交渉を困難にしている」とし、ロシアが望めば「ウクライナ全土を占領できるだろう」と断言した。

嘘と矛盾

 トランプ氏の一連の発言には当然、多くの嘘と矛盾が含まれている。

 言うまでもなく、2022年2月24日にウクライナに全面攻撃を仕掛け、多くの民間人を殺し、おびただしい惨劇を引き起こしてきたのはロシアだ。さらに戦争は、実質的には14年3月のロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合と、同国東部への、あからさまな軍事介入、不安定化のプロセスから始まっている。その後、東部では戦闘が激化し多くの民間人が双方の攻撃の犠牲となったが、その引き金を引いたのはロシアであることは疑いようがない。

 さらに、ゼレンスキー氏の支持率が4%というのも明らかに嘘だ。キーウ国際社会学研究所(KIIS)が今年2月4~9日に実施した、被占領地域を除くウクライナ全土の1000人に対して実施した電話調査の結果では、ゼレンスキー氏の行動を「信頼する」と答えた回答は全体の57%にのぼった。


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