2025年12月5日(金)

プーチンのロシア

2025年2月28日

 同氏の支持率は戦争開始直後に9割あり、その値は減少していたものの、依然として多くの人々が同氏を支持しているのが事実だ。ウクライナ国内では、仮に今大統領選挙を実施すれば、国民的に人気が高いザルジニー元ウクライナ軍総司令官が出馬しない限り、ゼレンスキー氏が再選するとの見方が強い。トランプ氏が主張する4%という数字は、根拠がないのが実情だ。

矛盾した構図

 しかし、重要なのは彼の発言の細部が正しいかどうかではない。決定的なのは、そもそもウクライナがロシアに対抗することにおいて、米国からの支援を受け続けなければ戦闘を継続できないという、矛盾した構図にある。

 トランプ政権が発足した今年1月20日、米国務省はこれまでの対ウクライナ軍事支援を列挙した白書を発表した。そこには、22年2月以降のウクライナに対し、米国が総額659億ドルの軍事支援を提供したと明記され、さらに最新鋭の防空システムやミサイルなど、支援の内容が詳細にわたって列挙されていた。

 バイデン政権時に作成されたであろうこの白書は、「米国とその同盟国、パートナーは、ロシアによる許されがたい、言語道断のウクライナへの侵略に対し、団結して支援を提供する」と、強いトーンでウクライナ支援の重要性を強調している。しかし、逆に言えばそのような支援が失われれば、ウクライナが戦場で極めて困難な事態に陥る現実を示唆していた。

 欧州の調査によれば、開戦以降EUがウクライナに対し実施した軍事支援は総額約620億ユーロで、米国による支援の500億ユーロを上回った。しかし、その米国の支援が失われれば、ウクライナ軍がもたないのは明白だ。

 さらに米側は、ウクライナ側がレアアースの開発権益の供与などの米国の要求を受け入れなければ、ウクライナ軍を支えてきたドローン兵器をコントロールする衛星通信サービス「スターリンク」の提供を止めると警告したとも報じられている。ウクライナは、軍事面で手足を縛られた格好だ。

交渉へ前のめりのロシア

 そのような状況を、ロシア側は千載一遇のチャンスとして小躍りして受け止めている。メドベージェフ元首相は、ゼレンスキー氏を「独裁者」と形容したトランプ氏の言動を「3カ月前には考えられなかったことだ。トランプ氏は200%正しい」とほめそやした。メドベージェフ氏は特に強行的な発言で知られるが、それはプーチン政権内での役割を演じているだけで、彼の発言は実質的にプーチン氏の考えを強く反映している。

 ロシアには、戦争終結を急ぎたい実情もある。ロシア軍の死傷者数は、昨年は約43万人に達し、23年の25万人からほぼ倍増したとみられている。

 ロシア軍が前線で展開する〝肉ひき機〟などと揶揄される大量の歩兵を使った人海戦術が死傷者数の急増を招いているためだ。死傷者の増大が止まらない中、ロシア当局は報酬をつり上げ「志願兵」と呼ばれる契約軍人の採用を強化しているが、実態は素人同然の兵士も少なくなく、金に困った中高年層が徴兵に応じ、多数が死亡している実態があきらかになっている。


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