2025年12月6日(土)

Wedge REPORT

2025年3月6日

 こうした対応策やサービスが導入されているのだが、カジュアルな価格帯の飲食店ではコストや手間を考慮し、対策を講じていないところが依然として多い。一方で、料理代1万5000円以上の高級店では、予約時に登録させるクレジットカード決済を導入しており、結果的にキャンセルがプラス収益につながる場合もある。

 しかし、客単価3000〜4000円といった価格帯の店舗では、事前決済の導入が予約獲得への障害となり、システム導入を見送る傾向にあることが指摘されている。ある知人のレストランでも、10人規模の予約が直前でキャンセルされ、キャンセル料を回収できないケースが発生しており、この課題の深刻さがうかがえる。

対応は進むも課題は残る宿泊業界

 宿泊業界では、飲食よりもキャンセル対応は進んでいるように見える。ただ、対応は進んでいる事業者とそうでない事業者の二極化が進んでいるようだ。

 地方の旅館や中小規模のホテルでは、予約管理システムが未整備で事前決済が普及していない、システムは整備されているもののキャンセル料を徴収する慣習になっていないといった場合がある。ある大手リゾートホテルチェーンでは、キャンセルポリシー上キャンセル料が発生する場合でも、体調不良等なんらか理由をつけてキャンセルの連絡をもらった場合には、将来的な来訪を期待して原則キャンセル料を取っておらず、カード情報を取得していなかったため、無断キャンセル時に課金できない状況であった。

 昨今は多くのホテルチェーンが事前決済システムになっており、ノーショーの確率はかなり減少している。電話予約の場合にもURLを共有してデポジットを取るホテルも出ている。しかし、日系ホテルの予約システムの複雑さから、必ずしもノーショー問題を解決できているわけではない。

 予約の流入は自社予約、オンライン旅行代理店(OTA)、旅行代理店経由といった多様なルートがあるのだが、日系ホテルの直予約比率は20%程度で、顧客データを自社で全て把握しきれないことも、キャンセルチャージが取りづらい遠因になっている。外資の大手チェーンは自社予約の割合が多く、ノーショーの問題もほぼ解決され、顧客データの多くを自社管理できるので予算(計画)と業績(実績)を比較した予実管理は±3%以内になる場合が多い。筆者が聞いた日系の大手ホテルチェーンの一つは予実管理が±5%と外資よりブレ幅が大きかった。

 民泊では、大手のAirbnb(エアビーアンドビー)がゲストに予約時のクレジットカード全額前払いを導入しており、ノーショー問題は極めて少ないという。宿泊後24時間以内にゲストやホストから特段の申し出がなければ、ホストの口座に即時入金される仕組みが整っており、これによりノーショーによる取り損ねが原則発生しない。

 Airbnbのキャンセルポリシーはホストが自由に設定可能で、柔軟(直前キャンセル可能)、厳格(全額徴収)など選択肢が提供されている。また、自然災害や緊急事態においては例外措置が適用されるものの、ゲストの自己都合によるキャンセルについてはポリシー通りに料金が請求される仕組みである。


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