2024年11月27日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年3月28日

 要するに、中国は身動きができない。強く出れば台湾は反発するが、強く出なければ、台湾はいっそう明確に独自のアイデンティティーを打ち出すことになる。会談で張志軍・中国代表は、「正しい道を歩んで行けば、目的地は遠くない」と言ったが、問題は双方の考える目的地が同じではないことだ。だから、中国は今のところはシンボリズムで間に合わせるしかない、と述べています。

* * *

 論説末尾の「中国は身動きできない」という情勢判断が、おそらくは、もっとも正鵠を射ているものでしょう。

 中国としては、統一の方向に一歩でも前進させたいのでしょう。それは、ここでも引用されている、昨年APECにおける習近平の発言からも明らかです。しかし、国民党政権としては、一歩でも統一に近づいたという印象を与えることは、来る国内選挙では自殺行為になります。

 他方、統一の方向に一歩も進まないままで、中台接触のレベルを上げることは、台湾の存在を法的に認めることであり、中国が従来最も避けて来た所です。

 その意味で、「中国は身動きできない」と言う判断は正しいと思います。残る手段としては、中台経済社会の依存度を高め、「熟柿の落ちるのを待つ」と言う従来の政策を続ける他はありませんが、中国経済自体の見通しに翳りが出て来ている状況では、台湾の方が経済パートナーの多様化を求める状況ともなっています。

 あとは一か八かの武力行使ですが、常識で考えても成功の可能性は小さく、たとえ短期間成功しても、それは中米全面対決の引き金になり、それほどの冒険に打って出る可能性は少ないのでしょう。

 結局、中国に出来ることは、国民党政権時代に築いた台湾内、あるいは中国在留の台湾人の間における中国の影響力を行使して、次の選挙における国民党の勝利を期待することであり、現在の中台接触、APECにおける首脳の接触などを通じて、中国についての好印象を台湾に植え付け、選挙戦の一助とすることしかないのでしょう。

 ただ、それをすれば、台湾の現状承認への一歩であるとの印象を与えるだけでなく、中国自身が台湾の民主主義のゲームに自ら参加することになり、そして、その上に選挙に負ければアブハチ取らずとなる恐れもあります。

 つまり、「中国は身動きできない」という情勢判断になります。

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