2025年4月7日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2025年3月29日

30年以上キャンペーンが変わらないワケ

 次の本は、 『「そうだ 京都、行こう。」が長く続くわけ ~多くの人に受け入れられる良い広告とは~』(水野由多加著、交通新聞社)である。 言わずと知れたJR東海のキャンペーンである。

 1993年から現在まで30年間続いている長寿企画であり、本書ではこれが長く続いている理由を分析した。 著者は「奇蹟の広告キャンペーン」と表現し、世の中にコロコロ変わる広告が多い中で30年間一貫して変わらない点を高く評価している。

 なぜ変わらないのか。著者はこう表現する。

変える必要がないからである。しっかり人々から受け入れられて、京都へ行く観光客の気持ちを高めるのに成功し続けているから、変える必要がなく、変わらないのである。ここにはJR東海の趣味や意思ではなく、それを超えた世の中の支持がある。

 他の企業にも長年イメージの変わらないCMはあるが、 JR東海の場合は一種独特な魅力がある。見聞きする人の関心を引きつけ、長く記憶に残る。その一つに30年以上文言が変わらない「そうだ 京都、行こう。」のヘッドコピーの力があると指摘する。

計画を詳細に立てることなく、東海道新幹線に乗るだけで行くことができる京都を目的地として訴えかけており、海外旅行とは違った気楽さを感じさせる。(中略)ふとした思いつきで気楽に旅行に誘うコピーであったからこそ、現代の人の心を捉えたのだろう。

 人によって受け取るイメージは異なるだろうが、 本キャンペーンが京都の魅力を重厚に伝え続けていることも長く続いている要因であろう。美しい映像、変わらぬ音楽、しゃれたナレーションなどいずれも、芸術の域に達しているとの印象がある。

 本書に紹介される30年の歴史をふりかえると、何度訪れてもまた新たな感覚で京都に行きたくなるから不思議だ。観光シーズンの到来である。今年の春の京都はどんな姿を見せてくれるのだろうか。


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