これらの地域からウクライナの自由な地域に逃げた多くのウクライナ人のことは脇に置いて、ウィトコフは独裁者が占領下で行った国民投票に意味があると思っているのだ。
またウィトコフは、イギリスによるウクライナ和平案は「見せかけのポーズ」だと述べて、同盟国を軽んじるトランプ政権の悪しき性向も続けた。欧州の人々は、ウクライナが安全ならば欧州はより安全になるということを理解したのだ。そして米政府は、自国と隣国の防衛のためにようやく具体的措置を取ろうとしている同盟諸国を少なくとも嘲笑わないことはできるだろう。
交渉の最中は敵対的な言辞を抑える必要があることはわかる。しかし、ロシアのプロパガンダに丸め込まれがちなトランプ政権の体質はそれとは別だ。彼らがチェンバレンの例に倣うかどうかは、ウィトコフとトランプ氏が交渉している和平協定の最終的な中身次第だ。
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停戦3段階の条件
この社説はトランプ政権でウクライナでの停戦・和平協議で米国の特使として活動しているウィトコフを厳しく批判したものである。ウィトコフ特使はロシアのプロパガンダの影響を受けていることが歴然としているので、この批判は的を射たものと評価できる。
これまで第1段階としてウクライナにおけるエネルギー・インフラを対象とする攻撃停止が合意され、続いて、黒海での停戦が合意された。黒海の停戦がいつ発効するかはロシアが国際銀行間通信協会(SWIFT)にロシア農業銀行を復帰させる金融制裁緩和を条件にしているので、まだわからない。しかしこの2段階の停戦合意は歓迎できるだろう。
第3段階として、この後、双方が争っている領土上に停戦ラインを引き、停戦するということになろう。この第3段階が最も難しい。ウィトコフは14年にプーチンが併合しようとした東部ウクライナについて、これらの地域の住民はロシア語を話し、住民投票で圧倒的多数がロシアの支配を望んだと述べている。