2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月9日

 一方、今月初めに台湾の半導体メーカー台湾積体電路製造(TSMC)が米国の半導体製造工場に少なくともさらに1千億ドルを投資すると発表したことで、台湾は関税の執行は猶予されたようだ。

 米国と台湾は正式な外交関係は結んでいないが、米国は台湾にとって最重要の軍事支援国であり、両国は台湾関係法で結ばれている。同法は米国から台湾への自衛の武器の売却を約定しているが、台湾が攻撃された場合の米国の介入の義務については何も言っておらず、米国は戦略的曖昧さと呼ばれる立場を保っている。

 米国による台湾軍の訓練と協力の例としては、高雄市で台湾海軍を2年間訓練する協定がある。今週台湾議会に提出される防衛の報告書によると、昨年、台湾、米国その他の同盟国は防衛政策、武器売却、情報、防衛研究開発に関連して500回以上の交流を行った。

 また、頼総統は今月、国内総生産(GDP)比3%への軍事費の引き上げを約束したが、これでもまだ米国の一部が求める水準に達しない。

 今月初め、顧立雄国防相は、トランプと米国は信頼できる同盟相手になるかと問われ、台湾海峡の現状と安定の維持は今も米国の核心的利益であると信ずると答えている。

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台湾を安心させたこと

 台湾海峡の平和と安全を維持するには、引き続き米国の積極的関与が必要であるとウォールストリート・ジャーナルの記事が述べている。今日の台湾情勢を鑑みる時、これは的を射た議論と言えよう。

 トランプ大統領の選挙期間中の発言は「台湾は半導体ビジネスを米国から盗んだ」とか「台湾は国防経費を負担しようとしない」など極めて否定的なものであった。そのため、台湾の中では、いざとなった時には米国は台湾を助けてくれないのではないか、との悲観的な「疑米論」に結びつく傾向があった。

 今年2月に入ってから、頼清徳総統は「国家安全保障に関するハイレベル会議」を開催した。そこで石破・トランプ間で発出された「日米共同声明」が「台湾海峡の平和と安定を維持することが極めて重要で、国際社会の安全保障と繁栄にとって不可欠の要素」と記述されたことを、台湾にとって、現時点での最大の安心材料と評価したようである。


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