米上院情報特別委員会は20年8月、16年米大統領選挙へのロシア介入の実態に関する1000頁近くに及ぶ報告書を公表している。その中で以下のような核心に触れる指摘がある:
・ロシア政府は、トランプ当選のために大統領選挙の妨害工作に乗り出した。
・ロシア情報機関はトランプ選対本部メンバーたちについて「容易にコントロールできる」とみなし、実際に、選対本部の幹部たちは、ロシア当局からの支援を得たがっていた。
・トランプ選対本部スタッフたちは、政府関係執務実績もないビジネスマンやトランプ個人のコネの人物たちで固められ、外国情報機関の標的になりやすい存在だった。
・トランプ側側近とクレムリン側の人物たちの間で多くのコンタクトがあった。
・16年、ニューヨークのトランプ・タワーで、マナフォート選対本部長、トランプ氏の義理の息子ジャレッド・クシュナー、トランプ・ジュニアのトップ3人がロシア側情報機関工作員だったコンスタンチン・キリムニクら二人と選挙戦略について秘密協議した。
また、ロシアによる対米大統領選介入問題については、米司法省が任命したミューラー特別検察官による1年がかりの捜査結果報告(19年4月公表)でも、①トランプは「ある外国政府の手助け」で大統領に選出された②トランプ選対アドバイザーたちとロシア側関係者が選挙作戦内容などについて協議した③トランプ陣営はロシアによる介入工作を歓迎した④トランプ氏はミューラー特別検察官による捜査を妨害したなどと結論づけられている。
なぜ、毅然たる態度がとれないのか
トランプ氏とプーチン氏との“蜜月”はその後も、絶えることはなかった。
ワシントン・ポスト紙ベテラン記者ボブ・ウッドワード氏は、自らの著書「War」の中で、二人はトランプ氏が1期目の大統領退任後も「最低7回」秘密の電話会談を行ったことを暴露している。
そして、トランプ氏が昨年大統領選で返り咲きを果たして以後は、二人の間で「長時間の極めて建設的会話だった」「両国首脳相互訪問で合意した」「ロシアのウクライナ侵攻の責任はウクライナにある」「ウクライナ問題についてのプーチン大統領の言葉を信じる」(いずれもトランプ氏コメント)などと、いずれもロシア側の立場に立った電話によるやり取りが行われてきていることは、周知の通りだ。
しかし、なぜ、トランプ大統領はロシアに対し、毅然たる態度をとれないのか、ロシア側情報機関に何らかの弱みを握られているのかなど含め、依然深い闇の中に包まれたまま今日に至っている。
一つだけ明確な点があるとすれば、トランプ氏が大統領の座にとどまる限り、米外交はロシア側に有利に、そして日欧諸国はその理不尽な政策に振り回され続けるということだろう。