2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月23日

 第三、米国は、台湾、韓国に対し、アメ(再保証)とムチ(核開発を継続する場合の同盟関係への悪影響)を用いて、核開発を止めさせた。ニクソン政権以降の政権によって、そうした核不拡散政策が意識的に取られた。対外防衛コミットメントを縮小する政権は核拡散に無頓着かもしれないが、それ以降の政権が同様に核拡散に無頓着とは限らない。カーター政権が核不拡散に顕著に重点を置いた政権となったように、逆に大きく振れる可能性もある。

 第四、台湾、韓国は、米国との同盟関係の不確実性に鑑み、核開発を開始したが、ニクソン以降の政権からの圧力があり、引き続き米国と同盟関係を維持することの重要性に鑑み、核開発を断念した。拡大抑止の被供与国にとって、米国の対外防衛コミットメントの削減は痛いが、米国との同盟関係を失うマイナスは核開発とは引き換えにできないほど大きなものであった。

日本との同盟関係はどうなる?

 上記の歴史的前例は、台湾、韓国と米国との同盟関係が維持される中で展開されたものだが、現在問われているのは、第二期トランプ政権において、引き続き米国との同盟関係を信じられるかどうかであり、その点が肝である。

 米国にとって、アジア同盟国の価値はインド太平洋地域に対する国家戦略に関わる。その意味で、米国の欧州同盟国への対応と、アジア同盟国への対応が異なったものとなっても全く不思議ではない。

 米国の中国との関係については、どこかの段階で「大国間の取引」がなされる可能性はあるものの、世界のナンバーワンを争う中国との関係を考えれば、自らにとって重要な戦略的なアセットである日本との同盟関係を切り捨てる可能性が高いとは言えないのではないか。

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