2025年12月6日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年4月25日

 トランプ第一期政権とバイデン政権は中国を米国最大の脅威と位置付け、バイデンは米国の曖昧戦略の限界を試す如く台湾が攻撃された場合に米国は支援に駆け付けると何度も述べた。ヘグセスのメモは軍事侵攻の形態と米国の対中戦闘形態を詳述し、バイデンよりも先を行っている。このメモは潜水艦、海上ドローン、陸軍海兵隊合同部隊増強を求め、台湾の重要性を最高位に位置づけていると言われる。

 分析家は、米国の対中姿勢強硬化は、経済制裁や偽情報、グレーゾーン戦略等の本格的紛争一歩手前の敵対行動に晒されている台湾の状況を悪化させると指摘する。もし人民解放軍が米国の行動強化を認識すれば、PLAも強硬な反応をする。具体的には、軍事訓練を一層激化し台湾海峡や南シナ海での軍事プレゼンスを増大する可能性があると言う。そうなれば最終的に傷つくのは台湾だ。

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政治的意図も

 トランプ第二次政権は、本当に秘密を守れないようだ。シグナルゲートに続き、国防省の紛争想定と戦略的優先事項を記した「機密/外国人への提供不可」の9ページの国防省内部文書が流出した。

 ただ、このリークは政治的意図に基づくものだ。すなわち、台湾および周辺諸国に対し台湾の防衛・侵攻抑止を米国が優先事項としていることを示すためで、実質的には米国の長年にわたる「曖昧戦略(台湾が武力侵攻された時に、米国が軍事支援に駆け付けるかどうかを明言しない政策)」の放棄に等しい。

 このリークにはプラスとマイナスの両面がある。プラスは、台湾を「安心」させることだが、余り安心させすぎると、防衛努力が減速し、逆に独立宣言といった無謀な政策をとる可能性が出てくる。だからこそ、米国は曖昧政策を維持してきたわけだが、その放棄は、中国侵攻の抑止の方が数倍喫緊の課題になったことを示すものだろう。

 マイナス面は、この9ページの文書が中国の目にも触れることだ。この記事によれば、それには中国の台湾侵攻方法と具体的対応が記されているとのことで、だからこそ台湾は米国の「本気」を感じたのだろうが、同時に中国に手の内を晒したことにもなる。ただ、言われているのは、この文書はヘリテージ財団の2024年の報告書と酷似し、それを写した個所もあるようで、中国にとり完全に新しいものではないかもしれない。


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