2025年5月13日(火)

オトナの教養 週末の一冊

2025年5月3日

 今月は大阪にまつわる一冊を選んでみました。大阪について、より広く、より深く知ることができます。

ただの像ではない「ベラボー」なもの

「太陽の塔」新発見! 岡本太郎は何を考えていたのか
平野暁臣(著) 青春新書 1100円(税込)

 竣工から55年たっているというのに、いまだに〝斬新〟だと感じるのは不思議だ。岡本太郎は太陽の塔を「西洋的でも日本調でもない、その両方をケトバしてるんだ」と語っていたという。当時の日本人の価値基準は、西洋近代主義と日本的な伝統主義で占められていた。西洋コンプレックスが膨らむと同時に、精神的なよりどころが必要だったのだ。「全く新しい日本人の価値基準を作りたい」という思いが乗った太陽の塔を見上げると、太郎のエールが聞こえてきそうな気がする。

ようこそ、カオスの楽園へ

西成DEEPインサイド
市原研吾(著) 矢島大輔(著) 朝日新聞出版 1650円(税込)

西成DEEPインサイド
市原研吾(著) 矢島大輔(著) 朝日新聞出版 1650円(税込)

 日本一の高さを誇る「あべのハルカス」を仰ぎ見ながら、西成の街を歩いた。簡易宿が多く、すぐ近くの新世界のように観光客で賑わっている様子もない。異世界という感じがする。それでも、ここには生活がある。しかも、普通の生活、いや本書を読むとそもそも「普通の生活とは何か?」と、考えさせられるが、いろんなバックグラウンドを持った人が集まり、逆に誰でも受け入れてくれる街でもある。まさにカオスが許される楽園、それが西成なのだと本書は教えてくれる。


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