2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年5月1日

 来場者数については、「想定の半分のペース」として厳しい見方を示すメディアもあるが、松本氏は「楽観的にみている」と公言している。その理由は関西に大挙して訪れているインバウンドで、万博は想定来場者数計約2820万人のうち350万人を海外客としている。この数字を巡り、松本氏は2025年に日本を訪れるインバウンドを4000万人とした場合、その4割の1600万人が関西を訪れ、万博会期の半年間で最大800万人が会場を訪れる期待があるとしている。

インバウンドという追い風と課題

 関西では万博を好機として、インバウンドの受け入れ態勢拡充が着々と進んでいる。関西に立地する3空港「関西国際空港」「大阪国際(伊丹)空港」「神戸空港」のうち、神戸は4月に国際化。関空は開港以来最大規模のリニューアルの主要部分が3月に完成し、空港全体での国際線旅客受け入れ能力は年間4000万人と、18年度実績の約1.7倍に拡大した。発着上限も引き上げられ、年間発着枠は23万回から30万回と成田空港並みになる。今後、伊丹の国際化の議論も進むことになりそうだ。

伊丹空港の拡充も進むのか(kawamura_lucy/gettyimages)

 インバウンドも追い風に、万博開催の経済波及効果について、経済産業省は2兆9000億円と試算。民間シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR、大阪市)は2兆7457億円と試算し、関西全体をパビリオンに見立て、さまざまな経済活動を広域で展開する「拡張万博」が実現できれば、効果は3兆3667億円まで膨れ上がるとの見方を示す。

 来場に伴う消費額の予測も強気のものが出ている。りそな総合研究所は約1兆円に上ると試算し、関西で新たに発生する需要は5670億円で、関西の実質域内総生産(GRP)を0.34ポイント押し上げる効果を見込む。その効果は関西だけにとどまらず、全国でも8570億円の経済効果が生まれるという。

 ただ、試算された経済効果を享受するためには、インバウンドのホテル需要への対応が重要となる。関西では人手不足のため稼働率を上げることができないホテルが増えており、宿泊客が関西以外に流れれば期待される効果は得られなくなってしまう。

 一方、万博に沸く大阪では、経済活動の中心地である梅田で、1期地区「グランフロント」と合わせて20年以上を費やしてきた再開発が大詰めを迎えている。3月には、JR大阪駅北側の再開発区域「うめきた2期(グラングリーン大阪)」で商業施設やホテル、オフィスが入居する「南館」が開業。都市公園と隣接した開放的なオフィスで、大手企業の拠点が続々と入居している。

 関西経済同友会の永井靖二代表幹事(大林組副社長)は「世界と万博会場をつなぐ結節点となる駅前広場が大阪の玄関口にオープンすることで、万博の成功に向けた機運がますます高まる」と期待。エリアには、スタートアップの支援拠点もあり、大学や研究機関も集まって新産業創出に向けた連携強化を目指していることから、永井氏は「国際競争力を持ったまちづくりの先導役として、持続可能な社会の実現に寄与するランドマークとなる」と強調した。

 再開発エリアは南館のオープンで全体の約7割が開業。27年度に全体のまちびらきが計画されている。


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